インターハイ制覇の前橋育英が「三冠」挑戦へ 冬の選手権に向けた展望は?

平野貴也

13年ぶり2度目の優勝を飾った前橋育英 【撮影:平野貴也】

 上手かった、そして強かった。圧倒的なパスワークとコンビネーションで、試合の主導権を握った。全国高校総体(インターハイ)のサッカー競技男子は、前橋育英(群馬)が13年ぶり2度目の優勝を飾った。

 決勝戦は、帝京(東京)に1-0で勝利。相手の鋭いカウンターに苦しめられながら相手より多くのチャンスを作り、試合終了間際に10番を背負うFW高足善(3年)のドリブルシュートで勝負を決めた。準決勝まで無得点だった高足は「決めた瞬間は、頭が真っ白。やってやったぞって感じが大きかった。10番としての意地を見せられたと思う」と喜びを口にする。課題にしていた守備でも、準々決勝の1失点のみに抑えるなど明らかに改善。安定感のある強さを示した。

 惜敗を喫した帝京の日比威監督は「完敗です。決定的な場面はお互いに作っていましたけど、作る機会は相手が多く、その作り方が私たちよりも(良く、縦パスを)ワンタッチで差し込むところ、判断のスピードが明らかに違った」と、一枚上手だった前橋育英のプレーに賛辞を惜しまなかった。

5度目の挑戦で初昇格したプレミアリーグで成長

 試合後、前橋育英の主将を務めるMF徳永涼(3年)は「優勝で終われたからこそ、次は狙われると思う。自分たちの目標は、あくまでも三冠で、その一つを取っただけ」と全国タイトル三冠への挑戦を宣言した。

 夏のインターハイ、冬の全国高校選手権、そしてユース年代最高峰プレミアリーグのチャンピオンシップ。このうち、プレミアリーグは、5度目の挑戦で念願かなって初参加にこぎつけた舞台だ。強豪Jクラブユースとも対等に渡り合い、7月時点で4位と上位につけている。

 山田耕介監督は「プレミアを戦うことによって、今までよりも細部、ちょっとしたズレとか、ちょっとしたパスのコースとか、映像を使って、彼らも理解できるようになった」と話し、これまでより一段高いレベルで検証を繰り返すことで、精度のこだわりや集中力が鍛えられたことを実感していた。

準優勝の帝京は「10個目の星」まであと一歩

古豪・帝京はFW齊藤が得点王に輝いた 【撮影:平野貴也】

 準優勝となった帝京は、19年ぶりの決勝進出。U-19日本代表候補のDF入江羚介(3年)を負傷で欠いたが、2回戦で前年覇者の青森山田(青森)に逆転勝利を飾るなど、強豪復活を印象付けた。

 決勝戦は、MF押川優希と得点王になったFW齊藤慈斗(ともに3年)が、ともに大会中の負傷でベンチスタートと本調子ではなかったが、健闘を見せた。帝京は何といってもインターハイで3回、高校選手権で最多タイの6回と計9回の全国優勝を誇る名門校だ。

自身も全国制覇を経験しているOBの日比監督は「今回は準優勝で、新たな山を見つけた。そこを登るだけ。学校が運営するサポーターズクラブがあり、すべての部活を応援、協力してくれているからこそ、良い背中を見せたい。山下(高明)コーチや松澤(朋幸)コーチも卒業生。オール帝京の力で返り咲ける場所に返り咲きたい」とスポーツ強豪校の大きなアイコンだったサッカー部の目指す場所を再確認。冬、ユニフォームの胸に10個目の星を刻む可能性は十分にある。

 主将を務めるFW伊藤聡太(3年)は「帝京高校は主役なので、夏取れずに冬取ったら、感動できる。一種のエンターテインメントとして良かったんじゃないかと思います」とニヤリ。悔しまぎれではあったが、秘めたプライドをのぞかせた。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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