関係者が「ざわつく」県リーグからの全国16強 レノファ山口U-18はどう強化している?

大島和人

レノファ山口U-18はクラブユースの全国大会でベスト16入りを果たした 【@orange_sakana】

ベスト16のうち11チームが「プレミア」

 第46回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会が7月24日に開幕し、熱戦を展開中だ。クラブユース選手権は短期集中型のトーナメントだが、選手たちはそれと別に通年のリーグ戦を戦っている。「高円宮杯 JFA U-18サッカーリーグ」は二つの頂点に当たるプレミアEast(東日本)、West(西日本)から、全国9地区のプリンス、そして県リーグと裾野が広がっていく構造だ。

 今大会の出場32チームがすべてJクラブのアカデミーで、その内訳を見ると「プレミア」が14、「プリンス」が14となっている。県リーグからの出場は湘南ベルマーレ、レノファ山口、ジェフユナイテッド千葉、ロアッソ熊本の4チームのみ。

 そしてベスト16に限れば11チームが「プレミア」だ。県リーグから唯一ベスト16に勝ち残ったのが、レノファ山口だった。

グループステージを1位で突破

 グループステージは初戦で「プレミア」の大宮アルディージャを2-0で下し、2戦目は京都サンガに2-2と引き分けた。3戦目はアルビレックス新潟を3-0で退け、Dグループ1位で突破を決めている。なおラウンド16は第44回大会の王者で、今季のプレミアWestで首位に立つ強豪・サガン鳥栖に0-3で敗れた。

 レノファの出場は4年ぶり2度目だった。2018年夏は0勝3敗、1得点7失点で大会を去った。同チームは過去に高1でトップ出場を果たした河野孝汰のような人材を輩出している。とはいえ全国大会の実績はほぼ皆無なチームがプレミア、プリンスと五分に渡り合っていて、それは今大会における最大のサプライズだった。

「プロになるという大きな目的のために」

 小林慎二監督は58歳のベテラン指導者。横浜F・マリノスに15シーズン在籍し、トップからアカデミー、提携先の大学と幅広い指導経験を積んだ。地域リーグや女子の監督も経て、2022年からレノファU-18の監督に招かれている。

 小林監督はこう口にする。

 「ベスト16を見れば、他はもうビッグクラブ、J1クラブです。県リーグがここまで上がってきたことで、少しざわつくのではないかと思いますね」

 就任後半年の取り組みについてはこう振り返る。

「クラブのプレーモデル、レノファが目指しているサッカーはあります。ただプロになるためにはどういったものが必要かという大前提を考えたとき、もう少し運動量、モビリティを上げなければいけません。自分たちで工夫しながら色々なアイディアを出して、ピッチの中で展開を変えていけるような選手が必要です。僕個人の考えですけれど、ユースで学ぶべきところは、もう少しモビリティを効かせるところ、アイディアを発揮すること、そして人との絡みですね。プロになるという大きな目的のためには身体を張るとか、しっかり戦うとか、メンタル的なことも含めて、『やらせるべきことはやらせた』だけの話です」

レノファU-18の強みは?

 U-18はトップの[4-3-3]と違う[4-4-2]の布陣を採用していた。背後への飛び出し、突破に優れたFW上村音生や、プレイメイカーのMF原田幹太など、一定レベルの人材は揃っている。とはいえ先発11名の平均身長は172.7センチと小柄で、スペシャルな個がいるチームではない。チームの強みになっていたのは切り替え、献身性といった部分。またサイドチェンジ、最終ラインの背後を突く斜めの浮き球など、「相手DFが嫌がるパス」を上手く織りまぜる曲者でもあった。

 監督にチームの強みを尋ねると、このような答えが返ってきた。

「僕自身『これだ』というものはないんです。例えば関東に比べると、レベルもそうですし、雰囲気がのんびりしています。寮生なので一丸となれるところはありますが、あとは技術的にもフィジカル的にも……。見ても分かるように小さな選手ばかりですから」

 コンセプト、戦術といった“形”を強調するチームもある中で、小林監督はディテールへのアプローチが多い。

「僕はマリノスが大分長くて、トップチームでもやっていました。そういったところで『プロになるため(に必要なプロセス)』とか『勝負どころ』といった経験値を年の功で持ってる方だと思います。そこを上手く選手に伝えながら、できるだけ選手が一番力を出せるような状況をまずソフト面で作ることにトライしています」

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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