インターハイ制覇の前橋育英が「三冠」挑戦へ 冬の選手権に向けた展望は?

平野貴也

混戦を象徴していたベスト4の戦い

 決勝戦にふさわしい激戦を展開した両校だが、勝ち上がりが楽だったとは言い難い。特に準決勝は、ともに薄氷の戦いだった。

 前橋育英は、前年準優勝の米子北(鳥取)にPK戦で勝利。帝京も、FC東京加入内定のMF荒井悠汰(3年)を擁する昌平(埼玉)を1-0で下したが接戦だった。戦前から混戦模様と見られていたが、あらためて実力の拮抗ぶりが明らかになった大会でもあった。

 ベスト8で敗退した大津(熊本)、矢板中央(栃木)などを見ても、上位チームに大きな差はなかった印象だ。混戦模様の中で、前橋育英が突き抜けるか、他チームが待ったをかけるかは、冬に向けた見どころとなる。

神村学園は、コロナ禍の影響で真価発揮できず

最注目FW福田を擁した神村学園は持ち味を出せず初戦敗退 【撮影:平野貴也】

 そのような中で、いまだに影響を無視できない悲しい状況も存在している。前橋育英が2回戦で対戦予定だった磐田東(静岡)は、新型コロナウイルスの陽性者が出たため、出場辞退を余儀なくされた。

 国内外のプロクラブが関心を示しているFW福田師王、C大阪に加入内定のMF大迫塁(ともに3年)を擁する神村学園(鹿児島)は初戦で敗退。プロ注目のMF名願斗哉(3年)を擁する履正社とのゲームは、多くの報道陣、スカウト陣が足を運んだ注目カードだった。しかし無敗で首位を走るプリンスリーグ九州で見せていた攻撃力は影をひそめ、まったく持ち味を発揮できずに大会を後にした。

 有村圭一郎監督は「最後の最後に来て、バタバタしたところがあり、コンディションが良くなかったところはある。でも、それは互いにあり得ること。そこに対してうちの選手がモチベーションを上げてやれなかった、(指導陣が)やらせきれなかったというところ」とコメント。直接的な敗因としての言及は避けたが、大会前に主軸選手が新型コロナウイルスの陽性者や濃厚接触者となり、隔離期間を設けるために、チーム作りができなかったことを明かした。

コロナに苦しみ続ける最上級生、力を出し切る最後の舞台は整うか

決勝の観客数は2137人。会場の活気は、どこまで戻るのか 【撮影:平野貴也】

 インターハイは3年ぶりに有観客開催となった。声援こそ禁止だが、応援団がメガホンや太鼓などを持ち込むスタンドからの“サポート”が復活。ベスト4となった米子北のMF中井唯斗(3年)が「今年は有観客で、緊張感が全然違った」と話したように、スタンドには以前の活気が戻りつつある。

 しかし、力のあるチームや選手が、活躍の場を不意に奪われたり、磨いてきたプレーを発揮できなかったりする事態はいまだに残り、コロナ禍の大きな影響は無視できない。安全確保は重要だが、各チームが大きく力を削がれている状況であることも否めない。

 今年度の3年生は、入学直前からコロナ禍に苦しめ続けられている。2020年度に1年生大会がなくなったり、上級生とともに活動することを避けたりと様々な行動制限を受けながら高校生活を送ってきた。

 夏の大舞台を終え、高校ナンバーワンを決する舞台は、冬の高校選手権へと移る。混戦模様の今季、最後の栄冠を勝ち取るのは、どこなのか――。コロナ対策の緩和を含め、混戦の中で切磋琢磨するチーム、選手がしっかりと力をぶつけ合える舞台の整うことが期待される。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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