ブラジル戦から学んだ「世界との戦い方」 ガーナ戦での森保采配と久保の代表初得点

宇都宮徹壱

6年ぶりのキリンカップはトーナメント方式

6年ぶりの開催となったキリンカップはノエスタでのガーナ戦からスタート。久保建英はスタメンに名を連ねた 【宇都宮徹壱】

 6月のインターナショナルマッチウィーク、日本代表の3試合目の対戦相手はワールドカップ(W杯)出場を決めているガーナ代表である。日本は今月、もう1試合が予定されているが、対戦相手は「未定」となっていたことに、疑問を感じた方も少なからずいたのではないか。実際、6月10日のガーナ戦が終わらないと、14日の日本の対戦相手は決まらない。

 札幌でのパラグアイ戦と東京・国立のブラジル戦は「キリンチャレンジカップ」。それぞれ単発の試合であるの対し、6月10日と14日に行われる「キリンカップサッカー」は大会である。こちらは日本とガーナ、そしてチリとチュニジアによるトーナメント方式。10日にノエビアスタジアム神戸で行われた第1試合は、チュニジアが2-0でチリに勝利している。日本はガーナに勝てばチュニジアと決勝を戦い、敗れればチリとの3位決定戦に回ることになっていた。

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 FIFA(国際サッカー連盟)よりAマッチに認定された1992年以降、海外の2つのナショナルチームを招いての総当りで順位を決めるというのが、キリンカップの基本フォーマットだった。2009年までは途切れることなく続いていたが、開催時期の6月にW杯予選が組まれるようになると、キリンカップは「忘れた頃に開催される大会」となってしまった。今回は2016年以来6年ぶりとなる。

 さて、このガーナ戦に日本はどう向き合うのだろうか。森保一監督は前日会見で「キリンカップはタイトルを懸けた戦い」としながらも、メンバーについては「ブラジル戦から選手を替えて、出場機会を得ていない選手にスタートからプレーしてもらえるようにしたい」としている。結果、スターティングイレブンは、以下の顔ぶれが並んだ。

 GK川島永嗣。DFは右から、山根視来、吉田麻也、谷口彰悟、伊藤洋輝。中盤はアンカーに遠藤航、インサイドに柴崎岳と久保建英、右に堂安律、左に三笘薫。そしてワントップに上田綺世。ブラジル戦から9人を入れ替え、パラグアイ戦のメンバーをベースとしながら、久保と上田と柴崎が6月シリーズで初のスタメンとなった。

久保と前田の代表初ゴールでガーナに圧勝

山根(写真右)が29分に先制ゴールを決めると、日本代表は着実に得点を重ねていった 【Photo by Kiyoshi Ota/Getty Images】

 試合は、序盤から日本のペースで進んだ。特に際立っていたのは、堂安、久保、山根で構成された右サイドのユニット。インサイドの久保とワイドの堂安が、何度も入れ替わりながらボールを回し、後方からは山根が飛び出してくる。加えて、逆サイドからは三笘がドリブルで仕掛け、上田も最前線からアグレッシブなプレスをかけてくる。4バックでスタートしたガーナが、5バックでの対応に転じたのも当然であろう。

 日本が均衡を破ったのは、前半29分だった。右サイドから山根が久保にボールを預けてゴール前に前進。外側で受けた久保は、ワンアクションを入れてから中央にパスを入れ、内側にいた堂安がワンタッチで縦にボールを送る。最後は山根が左足で流し込み、日本が首尾よく先制する。

 ところがその山根が、44分に痛恨のミス。右ライン際から中央に送ったボールが、クリストファー・アントウィアジェイの足元に届き、最後はジョーダン・ピエール・アユーに豪快なミドルシュートを叩き込まれてしまう。ブラジルに比べると、プレーの精度が格段に落ちるガーナ。それでも、相手の致命的なミスは見逃さなかった。その2分後、三笘の右足によるゴールで日本が再びリード。前半を2-1で折り返す。

 後半の日本は積極的に選手を入れ替えながら、指揮官が言うところの「誰が出ても、誰と組んでも機能する」ことの確認に重きが置かれた。そうした中、相次いで代表初ゴールが生まれる。後半28分、三笘からの左サイドから折り返しを久保がシュート。ボールはバウンドしながらゴールネットを揺さぶった。さらに37分には、途中出場の選手たちが躍動。伊東純也の右からのクロスに、前田大然が飛び込んで4点目を挙げる。前田は7試合目、久保に至っては17試合目での代表初ゴールだった。

 日本ベンチが、最後のカードを切ったのは後半40分。山根に代わってピッチに入った中山雄太は左ウイングのポジションをとり、最終ラインは伊藤と谷口と板倉滉の3バックとなった。「状況的に試せるのかな」という森保監督のとっさのアイデアから、3-4-3を実戦でテストした上で4-1で勝利した日本は、チュニジアが待つ決勝に進出した。

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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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