連載:#BAYSTARS - 横浜DeNAベイスターズ連載企画 -

地方番組「水どう」が世界で配信されるまで ベイスターズ映画から考える映像作品の未来

中島大輔

『水曜どうでしょう』の藤村忠寿ディレクターが『BBB』を通してベイスターズに感じたものは何か 【(C)YDB】

 横浜DeNAベイスターズが2012年にDVDとして制作した『ダグアウトの向こう』は『FOR REAL』、最新作の『BBB』として全国の映画館で上映されるようになった。一方、北海道テレビで1996年に始まった『水曜どうでしょう』は全国で放映され、今も再放送されるだけでなく、Netflixで世界に配信されている。映像コンテンツはどのように展開していけば価値を高められるのか。ベイスターズで『BBB』の制作に携わった前原祥吾氏とMD(マーチャンダイジング)部の原惇子部長、そして『水曜どうでしょう』の藤村忠寿ディレクターが語り合った。(取材日:1月12日)

「ローカル番組」という付加価値

 私は関東で生まれ育ったなか、『水曜どうでしょう』を楽しく拝見させていただきました。ローカル番組からスタートし、じわじわと全国にファンができる上で仕掛けとして工夫されたことはありますか。

藤村 最初は、ローカル局が作るバラエティなんて誰も見るわけがないだろうという前提からスタートしました。そこで何が必要かを考えると、「そうか、ローカル番組って思われなきゃいいじゃないか」と。ローカル番組って打ち出すと、絵は決まっています。大通公園のテレビ塔からパンしてきて「どうも、こんにちは」って始まる。それはやめて、北海道でロケせず全国各地や海外のいろんなところに行きました。

前原 僕は大学生の頃に旭川にいて、再放送を見て面白いなと感じていました。

藤村 自分たちもつくるのが面白くて、初めから道内の視聴率も良くて。2年目くらいに東北地方の人たちが面白いと聞きつけて番組を買ってくれました。北海道のローカル番組というつくりではないことが功を奏し、秋田や仙台の人も普通に見られる。徐々に全国で放送されるようになり、「北海道のローカル局がこんな番組をつくっているの?」という驚きが広がっていきました。
 それで方針転換して、「北海道のローカル番組なんです」って逆に言い出したんですよ。すると「え? 東京じゃないんですか?」って。「北海道のローカルでこんな面白いのをやってるよ」って、皆さんが勝手に盛り上がってくれた。これが成功なんですよ。「面白い番組がある」だけでなく、付加価値がつくので。

自分が面白いと思うものを、どう売るか

『水曜どうでしょう』は今や世界に配信されるコンテンツとなった。どのように仕掛け、どのような軌跡を辿ってきたのか… 【写真提供:HTB北海道テレビ】

――1996年に放送が開始された『水曜どうでしょう』は2022年現在、Netflixで世界に配信されるまでになりました。

藤村 僕は1996年に制作部に来るまで営業系の職種にいたので、視聴率を取らないとお金にならないことは身に染みてわかっていました。最初は深夜1時頃に放送し、視聴率を取れていたんです。当時、久米宏さんの『ニュースステーション』(テレビ朝日系列)がすごい視聴率を取っていて、その次の時間帯の11時台に上げてもらえれば10%は見えるなと。あの時間帯にローカル局がバラエティをやるなんてありえなかったけど、「11時台に上げてくれたら必ず10%は行きます」と言ったら、やっぱり行きました。

 でも、テレビ業界にとって一番の勲章は20%を超えること。自信もあったんですよ。ゴールデンで流せば20%に行くと思って枠を空けてもらったら、以前と変わらず12%くらい。時間帯が変わっても、見る人は変わらないのかと思いました。そのときに感じたのは、20%を取るにはどこか媚びないとダメだなと。高齢者にもわかりやすく、子どもにも受けを狙うみたいな。でも、俺にはできねえなと。

 そうだったんですね。

藤村 次に考えたのは、自分の中でこれは本当に面白いと思ったから、DVDとして売り出してほしいと。そのために番組を1回閉じました。テレビ番組は30分と決められているから、時間に制限される部分が非常に多い。でもDVDは枚数を増やせば、時間の制限はない。番組を再編集してDVDの制作を始め、グッズも好きだからつくったら、『水曜どうでしょう』のファンがどれくらいいるかわかってきて、2万人は買ってくれるという目算がありました。DVDを出したら案の定、3万枚が最初に売れた。1枚4000円だから、3万枚売れたら1億2000万円。

 すごいですね。

藤村 この時点で、視聴率って関係ないんだなと。20%を取るにはいろんな人に媚を売らないといけないけど、2〜3万人のファンの人だけに『水曜どうでしょう』を送るというやり方にしたら、どんどんお金が入ってきた。それがずっと続いて今やNetflixじゃないですか。

前原 配信はどのように決まったのですか。

藤村 Netflixが日本に来たばかりの頃、「素晴らしいコンテンツがあれば、それを世界に広げる役割が私たちです。日本のバラエティではこの番組がトップなので買わせてください」と言われました。その際に条件を一つだけつけて、「我々のDVDは日本で広く売れているから、あなた方が世界に広げてください」。それで中国語、韓国語、英語などに翻訳するのは全部向こうにやってもらっているから、こっちは非常に利益があるわけです。

 こうした流れを想像できたわけではないけど、テレビにあまりこだわらず、作品だけを見ていた。自分で面白いと思ったから、どうやって売ればいいか、どういう人に見せればいいかを考えていったら、映像の世界の流れに乗りました。今、ローカル局の人は「ネットに侵食される」と言っているけど、全然違う。ローカル局の方が恩恵に預かれる。世界に配信できるから。今、その段階まで来ています。

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著者プロフィール

中島大輔

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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