連載:#BAYSTARS - 横浜DeNAベイスターズ連載企画 -

ズブの素人を大橋ジム初の世界王者へ “酒友”斎藤隆に贈る「指導者の心得」

中島大輔
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投手王国を築き上げるべく古巣・横浜に帰ってきた斎藤コーチ。大橋会長との対談で得た金言を胸に、チームに新風を吹き込む 【(C)YDB】

 現役時代にベイスターズで先発、クローザーなどとして14年間活躍し、来季、17年ぶりの復帰が決まった斎藤隆チーフ投手コーチ。一方、生まれ育った横浜に1994年、ボクシングの大橋ジムを開設し、“モンスター”井上尚弥ら数々の世界チャンピオンを育ててきた大橋秀行会長。普段は“飲み友だち”という2人が「指導者論」を語り合った。(取材日:12月6日)

指導が良ければ、結果は後々に出る

――まずは斎藤さん、来季からベイスターズのコーチに就任することが発表されました。オファーを受けたときの率直な心境と、横浜で指導することをどう感じていますか。

斎藤 実は最初はお断りさせていただいたくらい、コーチは難しい仕事だと感じています。2020年に(東京ヤクルト)スワローズでコーチを務めましたが、1年間だけですべてをわかったわけではありません。一方で僕にとって、プロ野球のもとを正せば横浜の14年間がありますので、いずれ何かの形で恩返しをできたらという思いはずっとありました。球団の方から「ぜひ」というオファーを熱心にいただき、やるからにはという決心の下、お受けさせていただきました。

大橋 斎藤さんがヤクルトを退団されたとき、すごいショックというか。早く野球を教える姿を見たいと思っていたので、地元のベイスターズでコーチになってくれてすごく楽しみが増えました。コーチという仕事はすぐに結果が出るものではなく、指導が良ければ良いほど次の年、その次の年と、後々に結果が出てくるものです。ヤクルトの奥川(恭伸)投手は、斎藤さんの指導もあって今年の活躍につながったのではと僕は思っています。

斎藤 スワローズで感じたのは、やっぱり「人対人」だということです。最近の野球はデータもたくさん出ていますけれど、我々が向き合っているのは数字ではなく感情を持った選手なので。その中で誰をローテーションにして、誰をクローザーにして、とやっていかなければいけない。コーチとして全員にチャンスをあげ、平等にやりたいと思いますが、どうしても区別をつけなければいけません。実績や在籍年数は無視できませんし、若い選手と大ベテランが同じ力を持っているとしたら、どっちを選ぶかも難しいところです。

負けたときは、選手を絶対に叱らない

大橋ボクシングジムから井上尚弥などの世界チャンピオンを輩出してきた大橋会長が、選手を指導する上で大切にしていることは? 【撮影:白石永(スリーライト)】

大橋 僕は大橋ジムを開いて27年目になります。ボクシングジムの会長は、監督兼コーチみたいなイメージですね。試合に関して気をつけているのは、叱ることがあれば勝ったときで、負けたときは絶対に叱らない。試合に負けたとき、一番ショックを受けているのは選手本人じゃないですか。僕が現役のときに所属していたヨネクラジムの米倉(健司)会長がそういう感じで、そのやり方をずっと見てきました。選手が負けたときに僕が何かを言うとしても、時間が経ってからと決めています。

斎藤 早速メモさせていただきました。今日はお酒を飲まずにお話をできて良かったです(笑)。
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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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