連載:#BAYSTARS - 横浜DeNAベイスターズ連載企画 -

水どう×ベイスターズ、映像制作者の異色対談 藤村Dが「あえて」やった事、その覚悟とは

中島大輔

球団公式ドキュメンタリーの企画に携わる原惇子氏(写真左上)・前原祥吾氏(写真左下)と、『水曜どうでしょう』の藤村忠寿ディレクター(写真右)の思いが通じたこととは 【スリーライト】

 球団の舞台裏を追いかけたドキュメンタリー『ダグアウトの向こう』を2012年にDVDで発表し、以降、『FOR REAL』『BBB』を映画館で上映してきた横浜DeNAベイスターズ。一方、1996年に北海道テレビのバラエティとして放送が開始された『水曜どうでしょう』は地方番組という枠を超え、2022年の今も再放送されるなど人気を博している。パソコンやスマホなど、さまざまな手段で映像が見られるようになった現在、ファンに愛される「映像コンテンツ」をつくるには何が肝になるのか。ベイスターズで『BBB』の制作に携わった前原祥吾氏とMD(マーチャンダイジング)部の原惇子部長、そして『水曜どうでしょう』を大ヒットさせた藤村忠寿ディレクターが語り合った。(取材日:1月12日)

少数精鋭ならではの強み

――ベイスターズがドキュメンタリーを「映画」というフォーマットで届けるのはどんな理由があるのですか。

前原 一つの映像作品として長編で見せて、ファンの方たちにとって1年に1回の楽しみになればというところです。一緒に制作している映像作家やクリエイターの皆さんにとって、映画になるのはモチベーションになるだろうというのも大きいですね。

 2012年にベイスターズはDeNAという新しい母体に変わりました。いろんなことにチャレンジしていこうという気概が弊社にはありますので、業界でタブーとされてきた、ベンチの裏側を映すという新しい挑戦をしてきたという流れがあります。

藤村 正直、選手の名前は筒香(嘉智/2019年までDeNAに在籍し、翌年からメジャーリーグへ)くらいしか知らなかったけど、DVDを見たら他の選手も覚えました。

前原 それはうれしいですね。

藤村 映画ということで、すごい長尺で1年間追っているわけですよね。選手が打球を受けてケガして、ベンチ裏でトレーナーが寄ってきたときの生の会話を聞くのは珍しいからこそ、親近感が湧く。メディアがドキュメンタリーをつくる場合、いろいろ許可を取らないといけなくて、「これはやめてください」とか言われるけど、球団自らやっているから他のところはかなわないと思いました。

前原ありがとうございます。

藤村 何人くらいのチームでやっているんですか。

前原 すごく少ないですよ。監督兼カメラマンが1人。時々、サブで入ってもらうくらいです。

藤村 あれは1人じゃないとダメですよね。音声マンがいて、3、4人のスタッフになると、ああいう絵は撮れないと思う。

ドキュメンタリーならでのリアリティ

北海道から全国に広がり伝説となったバラエティ番組『水曜どうでしょう』。誕生した頃の裏話を藤村ディレクターが語ってくれた 【写真提供:HTB北海道テレビ】

――藤村さんは『水曜どうでしょう』について「ローカル局としての番組づくりを心掛けた」と話していましたが、どういう狙いがあったのですか。

藤村 だいたいのローカル番組はご近所を回って、例えば札幌であれば大通公園やすすきのに行って何か撮ってくる。日本全国の番組がそうです。僕はそれが嫌で、ローカル局だけど外に行こうと考えました。最少人数で行かないとお金がかかるから、嬉野(雅道)さんというもう1人のディレクターと、出演者の大泉洋さんと鈴井貴之さんの4人で行き、カメラマンはつけない。それは狙いとかではなく、仕方ないから。

前原 その心意気がすごく好きです。

藤村 2、3カ月分の予算を前借りしておけば、格安航空を使えば海外も行けるという計算でやりました。ちょうど1996年に番組を始めた頃、『進め!電波少年』(日本テレビ系列)で猿岩石の有吉弘行さんたちがユーラシア大陸横断の企画をやっていて、すごく盛り上がっていたんですよ。当時のビデオカメラは今より画質が悪いけど、その映像を見て「こっちの方がリアリティあるじゃん!」って。暗くて演者の顔が見えないけど、「ドキュメンタリーとして最高じゃん!」と思って。それに日本中の人が引きつけられたから、「だったらカメラマンもいらないじゃん。俺も海外行けるじゃん」という感じです。

前原 僕らも映像の質より内容にこだわりたいと思っています。映像作家はいい絵を撮りたいから、最初はぶつかりました。でも、やっていくうちにだんだん理解してもらえるようになりましたね。

藤村 今はみんな、スマホで撮っていますからね。我々の時代もビデオカメラを持って海外旅行に行っていたわけです。でもテレビ局が映像をつくろうと思ったら、スタジオを用意して、出演者はなるべく売れた人で、ロケに出るときは演者にピンマイクをつけて、ガンマイクで録る音声マンがいる。地方のローカル局でさえ、そうやらなければいけないと思っているんですよ。映像をつくる人は、やっぱりカッコいい映像や手の込んだことをやりたいと脳がなるじゃない?

前原 そうですね。

藤村 いいものを撮れるのがいいに決まっているけど、別に手持ちのカメラでもいいし、音だけでも撮れていればいい。その感覚は、カメラマンにはなかなかわからない。彼らは肩にカメラを担いで、絵を設定して、演者の顔に合わせて、ようやくカメラのボタンを押す。でも、ドキュメンタリーとしてはそれではダメ。ディレクターの発想としてはそうなります。

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著者プロフィール

中島大輔

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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