B1西地区展望 琉球の連覇は続くのか 大型補強の島根&広島はCS出場を狙う

大島和人

昨年のセミファイナルで“やられた”コー・フリッピンを獲得 【(C)B.LEAGUE】

 Bリーグは開幕から5シーズンを経ているが、歴代のB1王者はすべて東地区から出ている。しかし2020-21シーズンのオフには“東高西低”の構図を変えるダイナミックな動きが起こった。東から西に移動する有力選手が多く、島根スサノオマジックや広島ドラゴンフライズのように上位争いと縁のなかったチームが強烈な補強を敢行した。滋賀も新たな経営体制が発表されたばかり。B2、B3を含めた新アリーナの用意も進んでいて、B1が東地区の独壇場という時代もまもなく終わりを迎えるだろう。

 今季の西地区は下からの押し上げが強く、チャンピオンシップ(CS)の出場権争いは混戦となる可能性が高い。2021-22シーズンのB1は2チーム増の「22チーム/東西2地区制」で開幕する。なお今季は過去2シーズンに引き続いてB2へ降格が実施されない。昨季の勝率順に、西地区の11チームを紹介していく。

選手層の厚い琉球、西地区に移った富山もCSを狙う

 琉球ゴールデンキングス

 4シーズン連続で地区優勝中だが、CSはセミファイナル敗退が続いている。今季は桶谷大ヘッドコーチ(HC)が9年ぶりに復帰。チームカルチャーの再構築による浮上を図っている。

 田代直希は在籍6季目を迎えるスモールフォワード(SF)で、チームの新キャプテン。フィジカルな守備を見せつつ、昨季は40%を超える3ポイント成功率を記録し、プレイメイカーとしても頼りになる存在だ。ウイング陣は他にも今村佳太、牧隼利、コー・フリッピンと若く能力の高い人材が揃っている。

 フリッピンはアメリカ育ちだが母が沖縄出身。軽やかなドライブ、跳躍力が強みで、昨季は千葉ジェッツのファイナル制覇に貢献した。ポイントガード(PG)の並里成、岸本隆一も沖縄出身だ。並里はクリエイティブなプレーでお馴染みだが、守備のレベルも高く、手堅く組み立てるコントロールの安定感を身につけつつある。

 外国籍選手の3名はB1屈指の陣容。ジャック・クーリーは2季連続でリバウンドに輝き、攻撃でもしなやかなシュートタッチを備えるセンター(C)だ。ドウェイン・エバンスは昨シーズンに大活躍を見せたオールラウンダーで、さらに滋賀レイクスターズや新潟アルビレックスBBで圧倒的なスタッツを残したパワーフォワード(PF)のアレン・ダーラムも加わった。

 帰化選手の小寺ハミルトンゲイリーは日本でのプレー経験が長く、昨季は茨城ロボッツのB1昇格に貢献。130キロの巨漢で、周りの強みを引き出せるタイプだ。

 新加入の目玉はハワイ育ちの22歳で、日本代表の渡邉飛勇。9月4日の練習試合で右肘(右橈骨頭骨折)の骨折を負ってしまったことは残念だが、終盤戦には間に合うだろう。
富山グラウジーズ

 他チームの昇格により、今季は東地区から西地区に移った。昨季は浜口炎・新HCのもと、強豪の揃う東地区の4位でCS進出を果たしている。

 チームの柱はリーグのベスト5にも選ばれたジュリアン・マブンガ。ジンバブエ生まれ、アメリカ育ちの彼は206センチのPFながら、PGの役割も果たすオールラウンダーだ。もうひとつの柱はジョシュア・スミス。B1でもっとも“重い”選手で、インサイドのバトルは無敵。彼がボール下でボールを持ったらファウルで止めるか、神に祈るしかない。

 昨季はこの二人への依存度が高かったが、今季は新加入のPFブライス・ジョンソンにも期待できる。守備、リバウンドに強みを持つアスリートだ。

 一方で昨季の躍進を支えた前田悟、岡田侑大、松脇圭志の若手トリオや、開眼の兆しを見せていた橋本晃佑が移籍。戦力ダウンの懸念を持つファンも多いだろう。

 とはいえPGでチームリーダーの宇都直輝や、在籍14季目の水戸健史はチームに残った。上澤俊喜、飴谷由毅(奥田中では八村塁、笹倉怜寿の1つ後輩)と富山出身の関東大学バスケで活躍した新人も加わっている。

 また晴山ケビンは守備と3ポイントに強みを持ち、富山と合いそうなウイングプレイヤー。松井啓十郎は2019-20シーズンの3ポイント王に輝いたベテランシューターだ。二人は京都時代に浜口HCのスタイルも経験している。加えてトヨタ、千葉と強豪を渡り歩いてきた小野龍猛が加入し、キャプテンに指名された。CS出場は十分に狙えるチーム構成だ。

ディージェイ・ニュービルの残留が、大阪エヴェッサにとって最大の補強かもしれない。それほどインパクトのある選手だ 【(C)B.LEAGUE】

大阪エヴェッサ

 昨季は西地区2位でCSに出場している。天日謙作HCの療養、長期離脱というアクシデントはあった中でしっかりシーズンを戦い抜いた。

 昨季のBリーグはオン・ザー・コートルール改正の影響で、外国籍のアウトサイドプレーヤーが多く来日している。ディージェイ・ニュービルはその中でも特にインパクトを与えた存在で、Bリーグの歴史でも1、2を争うPGだろう。個人の打開力、状況判断が抜群で、試合の終盤になればなるほど持ち味を発揮する。昨季は第4クォーターの逆転劇をいくつも演出してみせた。

 新加入選手の目玉はもちろん竹内譲次。15年以上に渡って日本代表を支え、アルバルク東京の3連覇を支えたPFだ。スキルと状況判断に優れ、ハンドラーとスクリーナーが連携するピック&ロールの“3人目”としてスペースを作る、中継点になるクレバーさは唯一無二。昨季はプレータイムを減らし、東京五輪出場も逃したものの、日本人屈指のインサイドプレイヤーであることは間違いない。大阪は他にもカイル・ハント、ペリー・エリスと既に日本でプレーした経験のあるインサイドプレイヤーを迎え入れている。

 アイラ・ブラウンは来日11シーズン目の帰化選手で、39歳のベテランながら昨季はチーム最多の出場時間を記録した鉄人。パワー、跳躍力、スキルと全てを持ち合わせたオールダウンだーだが、竹内の加入によりSFでプレーする機会が増えるだろう。

「海外育ちの日本人選手」を積極的にスカウトするのも大阪の特徴だ。昨季はエリエット・ドンリーが台頭し、今季も大型シューターのザック・モーアが加入。彼らも含めて190センチ台のガード、ウイングが多く、かなりのビッグラインアップを組めるはずだ。

 怪我からの復帰が楽しみなのはSG橋本拓哉。190センチの大型でアスリート能力が高く、独特のステップ、高いシュート力を持つ。そう考えると大阪は昨シーズン以上に期待値が高い。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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