B1西地区展望 琉球の連覇は続くのか 大型補強の島根&広島はCS出場を狙う

大島和人

岡田加入の信州、辻加入の広島は昨年下位から逆襲なるか

昨年の富山グラウジーズで得点力を見せた岡田侑大。信州ブレイブウォリアーズをCSに導くことができるか 【(C)B.LEAGUE】

信州ブレイブウォリアーズ

 初のB1となったた昨季を20勝34敗で乗り切った。勝久マイケルHCはB2時代から通算4シーズン目で、戦術を理路整然と説き、チームに浸透させる高い手腕の持ち主。勝久HCの緻密なバスケに適応した選手たちが、引き続いてチームを支える。

 ウェイン・マーシャルは130キロの巨漢センターで、PG西山達哉を筆頭とするアウトサイド陣との連携が抜群。スクリーンをかけてからのロール、外に開くポップを経て自ら決める力もある。

 ピック&ロールに対応してペイントエリア内に人を集めると、外にシューターの栗原ルイス、大崎裕太が待っている――。信州はそんな憎らしいオフェンスを見せる。西山は昨季がプロ8年目で初の“1部”ながら、1試合平均11.1得点を記録。172センチと小柄な選手でもあるが、サプライズを与える結果を出した。

 長野出身のSF/PF三ツ井利也はロールプレイヤーとして22.7分の出場時間を確保し、欠かせない戦力となっている。

 新加入の目玉は2018-19シーズンの新人王・岡田侑大。ピック&ロールのハンドラーとしてズレを作る能力が高く、シューターとしても優秀だ。他にも若手PGの中では屈指の力量を持つ熊谷航、滋賀の主力だった前田怜緒が加わり、22歳の韓国人SFヤン・ジェミンも勝久HCのスタイルへ適応し始めている。上積みは明らかで、チャンピオンシップ出場を狙い得る陣容だ。
京都ハンナリーズ

 21勝36敗の西地区8位で昨シーズンを終えた。デイヴィッド・サイモンは39歳と高齢だが、過去3シーズンは安定したスタッツを残しているエース。PFジャスティン・ハーパーとのコンビは昨季に引き続いてチームの軸だろう。ただし現時点では獲得を予定していた外国籍選手がメディカルチェック後に契約を解除され、枠が一つ空いている。

 日本人は攻守に勢いのあるプレーを見せていたPG寺嶋良が移籍したものの、新たに鈴木達也が加わった。169センチと小柄だが、アシストやコントロール能力の高い司令塔だ。久保田義章、會田圭佑はいずれもB1での実績が豊富とは言えないが、ステップアップに期待できるPGだ。

 一言でいうと京都は知名度、経歴などが地味でも、チームに貢献できるタイプが揃っている。特に細川一輝は関東大学2部出身のルーキーながら昨季は43試合に先発し、守備力と3ポイントの決定力で大きな貢献を見せた。

 新キャプテン就任が決まった満田丈太郎はスピードが抜群。永吉佑也は日本代表経験があり、つなぎ以上の貢献を期待できるビッグマンだ。派手な補強を見せた他チームに比べると控え目だが、粒は揃っている。
三遠ネオフェニックス

 2019−20シーズンが5勝36敗、20−21シーズンが12勝47敗と低迷を続けている。昨季は1試合の平均失点数がB1最多で、守備が明らかな難点だった。

 そう考えると松脇圭志の獲得は狙いがよく分かる。富山の躍進に貢献したSGで、タフでクレバーな守備を売りにする選手だからだ。SR渋谷から加入した山内盛久もやはり守備力が際立つPG。PGは山内、津山尚大、田渡凌と3人全てが新加入で、誰がファーストチョイスになるか読み切れない。

 外国籍選手も3人が入れ替わっている。ロバート・カーターは島根、横浜で高レベルのスタッツを出しているPFで計算が立つ人材だろう。サーディ・ラベナは大学時代から代表でプレーしていたフィリピンの国民的英雄。昨季は怪我やコロナウィルス感染でなかなか本領を発揮できなかったが、日本への適応が進んだ今季はモノの違いを見せてくれるはずだ。

 杉浦佑成は早くから将来を嘱望されていた逸材で、昨季は島根で49試合に先発。196センチとサイズがあり、しかもスキルを併せ持つSFだ。太田敦也は前身のOSG時代から通算15シーズン目を迎えるビッグマン。昨季も1試合平均で20分を超える出場時間を確保しており、“仕事人”として貢献を続けている。

 津屋一球は東海大のキャプテンとして、チームをインカレ制覇に導いたルーキー。昨季は12月中旬からチームに合流し、特別指定選手として主力級の活躍を見せていた。シュートの思い切り、身体の強さがあり、状況へクレバーに対応できるSGだ。開幕前からチームに合流できる今季の飛躍が楽しみな逸材だ。チーム作りは未知数だが、駒の不足はない。

辻直人らと並んで広島ドラゴンフライズの目玉補強となった、昨季の得点王ニック・メイヨ 【(C)B.LEAGUE】

広島ドラゴンフライズ

 9勝46敗とB1最下位でシーズンを終えた。今季はカイル・ミリングHCの就任も含めてチームを一新。11選手中6名が新加入だ。

 ニック・メイヨは北海道からの移籍で、昨季のB1得点王。206センチのPFで、結果が示す通り彼のシュートは極めてスムーズで正確だ。チャールズ・ジャクソンは渋谷から加入したインサイドの職人で、ポストプレーやオフェンスリバウンドに強みがある。

 日本人では辻直人、青木保憲が強豪・川崎ブレイブサンダースからの移籍で加わった。辻は常に日本のトップレベルでプレーしていたSGで、勝負強いシューター。プレイメイクも得意で、ハンドラーとして起点にもなれる。

 寺嶋良は攻守の勢い、積極性に強みを持つPG。強力なインサイド、シューターが揃う中で、彼のドライブはより生きるはずだ。195センチながらやはりハンドラーとして起点になれるSF船生誠也も含めて、B1上位級の人材が広島に加わった。

 残留組も決してレベルが低いわけではない。パワーならB1屈指のグレゴリー・エチェニケ、SFでもプレーできる帰化選手トーマス・ケネディはいずれもチームのアドバンテージだ。

 アイザイア・マーフィーは将来の日本代表入りが期待される逸材。196センチのサイズを持ちつつスキルが高く、PGからSFまで複数ポジションの起用に対応できる。朝山正悟は40歳のベテランだが、昨季は1試合平均で26分以上に出場している鉄人。駆け引きに優れた3ポイントの名手で、クラブの象徴的存在でもある。

 ともに有力選手の加入で出場時間は減るだろうが、その分フレッシュな状態でコートに立てることになる。チーム作りに時間は必要だが、広島が成績を大きく伸ばすことは間違いない。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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