B1西地区展望 琉球の連覇は続くのか 大型補強の島根&広島はCS出場を狙う

大島和人

金丸移籍の三河は「走るスタイル」へ

エースの金丸晃輔が抜け、シェーファーアヴィ幸樹がチームの顔となるシーホース三河 【(C)B.LEAGUE】

シーホース三河

 昨季は東地区3位でチャンピオンシップに進出したものの、クォーターファイナルで千葉ジェッツに敗れている。振り返ると金丸晃輔、川村卓也、シェーン・ウィティングトンが40%台中盤の3ポイント成功率を記録。チーム全体でもリーグ1位のシュート成功率を叩き出しており、効率的で破壊力のある攻撃を売りにしていた。

 しかし今季は金丸、川村、ウィティングトンがいずれも国内の他クラブに移籍。鈴木貴美一HCは(前身のアイシン精機時代から)27年連続の指揮となるが、チームを“走る”スタイルへ劇的に変えようとしている。

 強力な攻撃を“お膳立て”していた側は残留している。ダバンテ・ガードナーは新潟時代に3季連続で得点王を獲得している選手だが、三河では周りを活かすプレーが強みになっている。カイル・コリンズワースはパス能力が傑出したPGで、リバウンドの貢献も大きい。新加入のジェロード・ユトフはGリーグ(北米で行われているNBAゲータレード・リーグ)時代に渡邊雄太とチームメイトだったことのあるオールラウンドなPFで、NBA経験も持っている。

 シェーファーアヴィ幸樹は昨季の全試合に先発、守備の貢献に加えてオフェンスの怖さも出てきた。高2からバスケを始めた遅さ咲きだが、東京五輪でも日本代表の“戦力”になっていた。Bリーグでも希少な外国籍選手と渡り合える日本人ビッグマンの一人だ。

 新加入選手はシュート力、高い守備力を兼ね備えた3&D(※スリーポイントとディフェンスに優れたロールプレーヤー)タイプの若手が多い。西田優大は東海大時代から日本代表候補に招集されていた左利きのシューター。角野亮伍はアメリカの大学で技を磨き、昨季は大阪で平均17.8分のプレータイムを得ていたSFだ。22歳の西田、23歳のアヴィ、25歳の角野とフレッシュな顔ぶれが揃った。

 橋本晃佑も203センチの長身ながら、やはり3ポイントを武器にできるPFだ。金丸や川村のような“飛び道具”は見当たらないが、テンポや守備の強度は大きく上がりそうだ。
名古屋ダイヤモンドドルフィンズ

 34勝21敗の西地区4位でシーズンを終えた。今季は昨季まで滋賀の指揮官だったショーン・デニス氏がHCとなり、選手の入れ替わりも多かった。外国籍選手は3名全員が国内の他クラブへ移籍し、得点源の一人だったSG安藤周人もアルバルク東京に移っている。

 ただ昨季に大ブレイクを果たしたPGの齋藤拓実は今季もチームを引っ張るはず。攻撃のスタッツは富樫勇樹に並ぶレベルで、名古屋はもちろん西地区の“主役”といえる存在だ。

 張本天傑は東京五輪の日本代表で、大型でなおかつ機動力を持ち、外国籍選手が相手でも苦もなく守る守備力を持ち主。名古屋ではロールプレイヤーとして、他の選手を活かす役割を果たしてきたが、決めるべきところは決めるシュート力も持っている。デニスHCの起用法によっては、新たな強みが出るかもしれない。

 新加入選手では須田侑太郎に期待が寄せられる。守備と3ポイントには定評があり、栃木(現宇都宮)、琉球、A東京と有力クラブを渡り歩いてきた29歳だ。

 三河でプレーしていたシェーン・ウィティングトンを除くと、外国籍選手の力量に未知数な部分はある。ただ西地区の上位争いには絡むだろう。

昨年のMVP金丸晃輔を獲得した島根スサノオマジック。チーム初のCS進出も狙える 【(C)B.LEAGUE】

島根スサノオマジック

 今オフの主役のチームだった。昨季は元HCのパワハラ問題による混乱もあった中で、河合竜児HCがよくチームを導き、大きく勝ち星を伸ばした。28勝32敗という成績は、昇格2季目としては立派なものだ。

 今季はニュージーランド代表の元HCで、昨季は香川ファイブアローズの指揮を執っていたポール・ヘナレ氏が新HCに就任。河合氏はコーチとして残り、過去のベースを引き継ぎつつ日本代表級の新戦力を2人迎え入れた。昨季の島根は3ポイントの成功率がリーグ最低と苦しみ、得点を外国出身選手に依存していた。今季は堅い守備や速攻といった強みを残しつつ、弱点が強みに変わるような編成をしている。

 金丸晃輔は昨季のB1 MVPで、日本一のシューターだ。相手のマークがタイトな中でも、平然とプレーするスキルと精神が光る。安藤誓哉はアルバルク東京の3連覇に貢献したPG。司令塔らしいリーダーシップ、強気に引っ張る姿勢を持ち、ピック&ロールのハンドラーとして流れを作れる。他にもベテランPG山下泰弘、SG阿部諒、守備力の高いSF白濱僚祐と人材は粒揃い。誰を安藤や金丸と組ませて、どう機能させるかが今から楽しみだ。

 外国出身選手はリード・トラビス、ペリン・ビュフォード、帰化選手のウィリアムス・ニカが残留。得点源だったデモン・ブルックスは北海道に移籍したが、オーストラリア代表のニック・ケイを新たに獲得している。継続と刷新のバランスが良く、チャンピオンシップ出場に近いチームの一つだろう。
滋賀レイクスターズ

 ショーン・デニスHCに加えて、主力の大半がチームを去った。昨季も23勝36敗と負け越したチームだが、今季は上積みがない状態からのスタートとなる。

 新HCは佐賀バルーナーズで指揮を執っていたルイス・ギル・トーレス氏。スペイン代表のアシスタントコーチとして2019年のW杯制覇に貢献している有能な指導者だ。試合中の情熱あふれる振る舞いが印象的な指揮官でもある。

 PGはキーファー・ラベナ、柏倉哲平、野本大智、澁田怜音と若く期待値の高い選手が揃う。キーファー・ラベナはフィリピン代表のキャプテンで、弟のサーディ・ラベナとともに国民的なスターでもある。スキルとバスケIQを併せ持ち、ハードでフィジカルなプレーもできるタイプだ。なおフィリピン国籍の選手はアジア特別枠が適用され、外国籍枠に追加して登録、起用できる。

 柏倉は昨季が初のB1だったが、新潟で20分近いプレータイムを得ている。野本は特別指定選手として29試合にプレーし、主力級の活躍を見せた。澁田怜音も高校、大学の在学中からBリーグでプレーしており、駒澤大3年の2019-20シーズンに佐賀のB2貢献へ貢献。昨季もB2プレーオフ進出を果たしている。いわばルイス・ギルHCの秘蔵っ子でもある。

 外国籍選手はショーン・オマラがB2、ノヴァー・ガドソンがB3からの移籍で大物とは言い難い。ただオヴィ・ソコは昨季のフランスリーグのベスト5で、イギリス代表でも活躍した選手。モデル活動やリアリティ番組「ラブアイランド」への出演から高い知名度があり、インスタグラムのフォロワーは何と187万人。大谷翔平選手や久保建英選手よりもフォロワーが多い。

 コート外では9月22日にマイネット社の経営参画が発表された。経営強化、環境整備が進めば、今までのような滋賀が育てた人材の流出も止まるだろう。今季は降格の不安がない中で、若手を育てることも可能だ。クラブの未来、飛躍に向けたトランジションの1年にしたい。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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