オルンガ、JリーグMVP&得点王は通過点 “浪速の黒豹”エムボマを超えてゆけ!
柏レイソルFWオルンガがアフリカ出身選手初のJリーグ最優秀選手賞を受賞。得点王とのダブル受賞に輝いた 【(C)J.LEAGUE】
アフリカ出身選手として3タイトル同時受賞というのは史上初。かつて“浪速の黒豹”と称されたパトリック・エムボマ(元ガンバ大阪、東京ヴェルディ、ヴィッセル神戸など)にも果たせなかった快挙である。「アフリカ出身選手はJリーグでもっと活躍できると思うし、そういう選手が加入することでリーグのレベルも上がっていくと思います」と目を輝かせたオルンガ。ケニア技術大学で地理空間工学を学び、2013年に工学士の資格を取得した「ケニアのエンジニア」に大輪を花を咲かせた今シーズンを総括してもらった。(取材日:12月22日)
文化を理解し、良好な関係を築こうと努力
来日初年度は苦しんだが、Jリーグのスタイルに順応した結果、2シーズン合計55ゴール(J1・J2)と量産した 【(C)KASHIWA REYSOL】
JリーグMVPに選ばれたのは、本当に素晴らしいこと。今シーズンは新型コロナウイルスによる中断をはじめ数々の困難がありましたが、Jリーグの方々、医療従事者のおかげでリーグ戦を開催することができました。私としては、特に柏のチームメート、すべての関係者に感謝したいですね。彼らとともに偉業を達成できたと思います。
――来日3年目、今シーズンはJ1で28ゴールを挙げました。
18年夏に初来日したとき、柏は困難な状況に置かれていました。J2降格回避のためには勝たなければいけなかったのに、自分は3点しか取れなかった。本当にガッカリしたし、フラストレーションのたまるシーズンでした。日本の夏は非常に蒸し暑く、生活面や文化に慣れるまでに時間かかりました。それでも柏のサポーターは私に大きな信頼を寄せてくれた。これまで以上に責任感を持ってプレーしなければいけない、と思って19年に挑み、J2で27点を取ることができましたし、今シーズンにもつながりました。日本文化をしっかり理解し、チームメートと良好な関係を築こうと努力したことが成功の要因だと考えています。
Jリーグへの順応、ゴールの秘訣など、オルンガは自身について的確な分析で答えてくれた 【スポーツナビ】
私は来日前にケニアや中国、スペインなどでプレーしましたが、各国にはそれぞれのスタイルがあります。例えば、スペインの場合はポゼッション重視のサッカーで、テクニックの高い選手がズラリとそろっている。サッカーのテンポ自体はゆっくりなんですが、技術でそれをカバーし、高いレベルを保っている印象です。それに比べてJリーグはテンポが非常に速い。試合の展開を読むことがすごく大事になってきます。日本人選手もスペイン同様にテクニックは高いですが、ハードワークもすさまじい。そこに順応することは自分にとっての大きなチャレンジでした。
――適応が進んだからこそ、19年、20年にゴールを量産できたのですね。
そうですね。19年はスタートからみんなと一緒に取り組めましたし、自分の置かれた立場を理解して、日本のサッカースタイル、日本人選手が何を求めているかを日々考えながらプレーしました。
ネルシーニョ監督が“ヴィトーリア”(勝利)にこだわる姿勢を強く押し出し、そのメンタリティーを選手たちに植え付けたことも大きかったと思います。彼は練習試合でも公式戦でもリーグ戦、カップ戦に関係なく貪欲に勝ちを追い求めています。規律を重んじる人でもあり、ピッチ内外での選手の言動を見ながら判断している。それがチームの成功につながっていると感じます。私自身もゴールにつながる方法や動きなど、いろんなことを教えてもらい、成長できましたね。