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オルンガ、JリーグMVP&得点王は通過点 “浪速の黒豹”エムボマを超えてゆけ!

元川悦子

ゴールの秘訣は視野と嗅覚、ハードワーク

オルンガが印象深いゴールに挙げたのはホームでの仙台戦。J1で初のハットトリックをマークした 【(C)J.LEAGUE】

――オルンガ選手にとって今シーズン、特に印象深いゴールは?

 7月26日のベガルタ仙台とのホームゲーム(J1・第7節)決めたゴールです(1点目は瀬川祐輔の右クロスをヘッドで押し込む。2点目は江坂任のスルーパスに抜け出してDFをかわして決めた。3点目は三原雅俊のスルーパスに反応して右足シュート)。うまくボールをコントロールできて、シュートまで短い時間に決めることができたし、J1での最初のハットトリックにつながりましたから。

――2シーズン合計55ゴール(J1・J2)というのは脅威の数字です。ズバリ、ゴールを挙げる秘訣(ひけつ)は?

 まず第一に、ゴールに対する視野や嗅覚を大事にしています。そこはストライカーにとって非常に重要な部分ですね。そのうえで私の得点パターンを見ると、ペナルティーエリア内でのゴールが多い。ポイントはポジショニングなんです。ゴールが見えている位置を取れれば、得点につながる可能性もより上がる。自分がいかにゴールが見えるポジションを取るか、が肝心だと考えます。

 もうひとつはハードワーク。常に最高のコンディションを維持しなければハードワークはできません。普段から睡眠や栄養に気を使い、メディカルスタッフからいろんなサポートを受けて体を整えること。それがトップレベルで活躍する絶対条件でしょう。

――決定力不足に悩む日本代表にも参考にしてほしい話ですね(笑)。オルンガ選手はアフリカ出身選手の潜在能力の高さをあらためて実証したという自負はありますか?

 そうですね。Jリーグでは(ナイジェリア出身の)ピーター・ウタカ(京都サンガF.C.)が現在活躍していますよね。今季はJ2で22ゴールを挙げ、得点王にも輝きました。この前、「おめでとうございます」とお祝いの言葉を伝えましたが、彼が献身的に戦っている姿は本当に素晴らしいと思います。日本サッカーの特徴を理解し、自分がどうすれば結果を出せるかを考えながらプレーすれば、アフリカ出身選手も難しいJリーグで良い結果を出せると確信しています。

アフリカ人選手がもっと日本に来てほしい

カメルーンのレジェンドでもあるエムボマ(左)は90年代に強烈なインパクトを残した。京都で活躍するウタカ(右)は今季J2得点王に輝いた 【(C)J.LEAGUE】

――Jリーグの30年近い歴史の中で、アフリカから来て強烈インパクトを残したストライカーと言えば、やはりエムボマ選手ですね。

 エムボマはJリーグだけじゃなくて、アフリカ大陸全体のレジェンドです。「カメルーン代表の左利きのストライカー」のことは私も幼い頃からずっと見ていましたし、すごいなと憧れていましたから。彼は知名度を上げて日本でも活躍し、欧州でも成功しました。そのサクセスストーリーには勇気づけられます。 ウタカに関してもそうですけど、彼らの活躍を見ていると自分のモチベーションもすごく上がりますし、Jリーグにもっとアフリカ人選手が来てほしい。それによってリーグ全体のレベルも上がると思います。

――オルンガ選手もエムボマ選手のように世界に羽ばたく可能性を秘めた選手だと思います。

 今シーズンはリーグ戦が終わりましたけど、まだルヴァンカップ決勝が残っています。その戦いが終わり、シーズンすべてが終了した時点でこの1年間の活躍を振り返り、分析し、改善点を洗い出し、より向上していかなければならないと考えます。そうすることによって、もっともっと強い選手になれる。そこからが次へのスタートだと思います。

「昨日の自分より今日の自分の方がうまくなっている」という言葉が私の頭には常にあるんです。向上心を持ち続けることは必要不可欠。ストライカーとして点を取り続けることはひとつのミッションですが、自分にはまだまだ課題がある。もっと完成度の高い選手になりたいんです。

――「ケニアのエンジニア」と言われるオルンガ選手はやはり真面目ですね。

 ハハハ……それほど真面目ではないですよ(笑)。試合中は真面目に見られがちですけど、ピッチから離れたらもっとクールなタイプかなと思います。

――最後に、今後に向けての意気込みをお願いします。

 Jリーグはアジアの中でのベストリーグ。今回の偉業達成によって私が国内、海外に良い意味で影響を与えたと思っていますし、この先も前進できるように頑張っていきます。

* * *

 オルンガ自身も言うように、2021年1月4日には延期されたFC東京とのルヴァンカップ決勝が待っている。そこでオルンガの豪快なゴールが見られるのか。柏は16年以来の王者に輝けるのか。すべては規格外の点取屋の一挙手一投足に懸かっていると言っても過言ではない。

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著者プロフィール

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

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