連載:キズナ〜選手と大切な人との物語〜

野球がつないだ吉田父子の強い絆 「父が見た頂点からの景色を僕も見たい」

瀬川ふみ子
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コロナに奪われた、一度しかない夏

エース兼キャプテンとしてチームを引っ張る行慶(右)に芝草監督(左)も絶大な信頼を寄せる 【瀬川ふみ子】

 覚悟を持って帝京長岡高校に転校し、高校2年生の一年間、公式戦に出場できなくとも練習をし続けてきた吉田行慶。そんな行慶の励みは「3年の春になったら試合に出られる。そこで今までの分を全部ぶつける」「一回の甲子園へのチャンスを絶対につかんでやる」というものだった。

 そんな行慶を今年から監督に就任した芝草宇宙(ひろし)が、キャプテンに任命した。

「春から夏にかけて、間違いなく行慶がチームの軸になる。だからこそ、行慶にはさらに自覚と自信を持って臨んでほしいという思いからですね」(芝草監督)

 生まれて初めてのキャプテンという大役に、行慶は戸惑った。父・篤史に助言を求めると、「やることは変わらねー」との一言だけ。「えーそれだけ?」と思ったそうだが、行慶は「背中で引っ張れってことだな」と読み取った。

「僕は口で言うようなタイプでもないから、練習態度とか日頃の行動で引っ張っていけばいいんだなと。そう思って、それからも変わらずやっていくようにしました」(行慶)

 こうして、今年から徳島インディゴソックス(四国アイランドリーグplus)の監督になった父・篤史は独立リーグでの日本一を目指し、行慶は、夏の甲子園に出て高校日本一を目指す――徳島と新潟、それぞれの地で大きな目標に挑むシーズンになるはずだったが……。

 新型コロナウイルスの感染拡大というまさかの事態によって、3月から練習が自粛になり、4月に始まるはずだった春の大会が中止になってしまった。

「僕には3年の春と夏しかない中で、そのうちの一つ、春の大会がなくなったときはやはり残念に思いました。でも、『まだ夏がある』って。本番は夏なので、そこに向けてしっかりとチームの状態を上げていこう。僕自身も夏に照準を合わせてモチベーションを上げていこうと切り替えました」(行慶)

 だが、無情にも……。
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