連載:岡田メソッドの神髄

岡田メソッドで指導者を変える 日本が「ベスト16」を突破するために

飯尾篤史
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第3回

日本は近年、年代問わずW杯でベスト16を突破できていない。その壁を越えるために必要なことは何か 【Getty Images】

 自立し、主体的にプレーできる選手を育て、自律したチームを作るために構築された「岡田メソッド」の中には、聞き慣れない言葉がたくさん出てくる。「シャンク」「デカラ」「ドック」「第1エリア」といった言葉が、それだ。新しい言葉を作ることに、どんなメリットがあるのか。岡田武史氏へのインタビュー第3回では、共通言語の重要性について聞いた。

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共通言語でお互いの理解を深める

――『岡田メソッド』には、「シャンク」「デカラ」(※いずれも第2回を参照)、「ガス」(※相手の守備組織を崩して突破し、ゴールへ向かう段階)「ドック」(※ゴール前に強固な守備組織を形成し、ゴールを守りながら相手を押し戻す段階)など、聞き慣れない言葉がたくさん出てきます。プレーモデルを作る際に新しい言葉を生み出したことのメリットをどう感じていますか?

 作る前は、「共通認識を深めるために新しい言葉を作ろう」くらいの感覚しかなかった。でも、子どもたちに指導するようになって、その効果が分かった。ひと言で済むんだよ。今までだったら「その場面では縦パスをあいつに向かって、こういう感じで入れろよ」と説明しなきゃいけなかったんだけど、言葉を作ってからは、「今の場面はシャンクだよ」のひと言で済むわけ。

 あるいは、ボール保持者に近いエリアを「第1エリア」と名付けているんだけど、「第1エリアに誰もいないじゃないか」と。このひと言で問題が解決する。それまでは「おい、ひとりはもっとボールに寄ってやれ。でも、みんなが寄ったらダメだ」って、説明するのに何倍も時間がかかっていたからね。

――ひと言でみんながイメージを共有できるわけですね。

 これは劇的だったね。自分でも驚いた。ただ、指導者だけが理解していちゃダメだよ。子どもたちも、その言葉を理解していないと。

――ただ、『岡田メソッド』を読んでいる際、新しい言葉を覚えるのが大変でした。子どもたちがそれを覚えるのも大変なことではありませんか?

 それは座学で覚えるからだよ。トレーニング中に「ここがニアゾーンだ」「ここが第1エリアだ」と教えたら、あっという間に覚えるよ。「デカラ」も「シャンク」も子どもたちはみんな、使っている。ただ、戦術用語的なものは、子どもたちはあまり使わないかな。「ドック」とか、「キャスティング&ウェーブ」「ウェービング」「ガス&フィニッシュ」とか。そういうのは、トップチームの選手の方が使っているな。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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