連載:岡田メソッドの神髄

岡田武史が本当に実現したいことは? 視線はサッカーを超えて、その先へ

飯尾篤史
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第5回

「岡田メソッド」を通じて本当に伝えたいことは? その思いはサッカーにとどまらない 【スポーツナビ】

 日本人が自立していないという傾向は、なにもサッカーだけの話ではなく、日本人全体に言えること。その点で、岡田武史氏の視線は、サッカーやスポーツの世界にとどまっていない。サッカーの世界から、日本を変えていくというチャレンジ。岡田氏への連続インタビュー最終回。「岡田メソッド」を通して、本当に伝えたいこと、実現したいこととは――。

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自立していたヒデ、ヤット、本田、闘莉王

――自立した選手が少ないというのが、日本サッカーの弱みということですが、逆に、岡田さんが日本代表でともに戦った中田英寿さんや遠藤保仁選手は、数少ない自立した選手の代表格でしょうか?

 ヒデもそうだし、ヤット(遠藤)もそうだし、本田(圭佑)もそうだったね。ほかにも(田中マルクス)闘莉王とか、ちょっとクセがあるようなヤツに多かったかな(笑)。でも、自立した選手が2、3人くらいでは、自律したチームにはならないというのが俺の感覚。そうした選手が6、7人集まったら違うかもしれないけど、2、3人だと周りに順化しちゃうんだよ。収まっちゃう。面白くないと言ったらアレだけど。

 それは日本人の素晴らしいところでもあるんだけど、実は大きな問題でもあると思う。日本人はそれを日本人の素晴らしさだと美化している。それはそれでいいんだけど、裏返すと、大きな問題でもあると理解しないといけない。おそらく日本が島国じゃなかったら、この民族は絶滅しているよ。

――四方八方から、あの手この手で攻め込まれてしまって。

 そんなお人よしみたいなことを言っていたらね。俺はこれからは生きていくのが大変な時代が来ると思っている。たくましさが必要というか。生存競争というのに近いくらいのね。そのとき、日本民族が生き残れるかどうかは、スーパーリーダーが登場するかどうかじゃなくて、一人ひとりが自立できるかどうかに懸かっていると思っていて。

 チェ・ゲバラはキューバ革命を起こすわけだけど、最初にキューバに行ったとき、仲間は数十人だったそうだ。それで政府軍と戦うんだけど、ゲバラは地元民から絶対に略奪するなと。戦闘後は敵味方関係なく、政府軍の人間であっても負傷者は助けてやれと。彼を慕って反乱軍に加わる兵士もいたんだ。そうやって徐々に仲間を増やしていって、一人ひとりが自立した人間の集まりになって、革命を起こしたんだよね。最初から資金力があって、人数もいて、政府軍と対等に戦って勝ったわけじゃないんだよ。

 大きな話になったけど、日本人が自立できていないのは、市民革命を一度も経験していないから、とはよく言われるよね。日本人が苦手とする主体的に自分の人生を生きるということを、サッカーの世界で実現する。そうしたら、こうなるんだ、ということを俺はやってみたいんだよ。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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