連載:キズナ〜選手と大切な人との物語〜

文田健一郎が東京五輪にかける思いの原点 父親が連れて行ってくれたロンドン五輪

佐野美樹
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ロンドンで米満が金メダルを掲げる姿を見て

リオ五輪に出場できず悔しさを噛みしめた日から4年。2019年の世界選手権で優勝した文田健一郎は東京五輪出場を勝ち獲った 【写真:MIKI SANO】

 レスリングのグレコローマンスタイル60キロ級で東京五輪の出場が決まっている文田健一郎(ミキハウス)は、高校生になると父・敏郎さんが監督を務める山梨県立韮崎工業高校へと進学した。中学生のときから高校生に混ざって指導を受けていたが、高校生になり、さらに本格的に父親の教えを請うようになった。
 父親であり、先生であり、監督。文田は「自分の中ではそれが普通で、常に切り替わっていましたけど、周りにはあまり理解されなかったですね」と言って笑う。
 時期的には思春期を迎えていたが、敏郎さんが心配になるくらい反抗期はなかったという。

「家に帰れば、普通の親子でした。私の監督仲間からもうらやましいと、よく言われていましたね。息子がいつレスリングを嫌だと言い出すか、心の中では不安だという話も聞いていましたから。でも、私はそんな思いを一度もしたことがなかった。健一郎は辛いこともあったと思いますけど、1回も泣きごとを言わなかったですから」

 ところが、文田の認識はちょっと違っていたから、思わず笑ってしまった。
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著者プロフィール

東京都出身。写真家いしだまこと、梁川剛に師事後、フリーランスのフォトグラファーに。サッカーやレスリングを中心としたスポーツや、人物ポートレートなど幅広い分野で活動。多くのスポーツ雑誌や一般誌などに写真が掲載されている。また、講談社『モーニング』誌上で人気サッカー漫画『GIANT KILLING』のスピンオフコラムとして、撮影に加えてインタビュー・執筆まで担当した連載を書籍化した『コトダマ ―蹴球魂 Jリーガーを変えた一言―』を2014年に上梓した。

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