大迫勇也は降格圏のブレーメンを救えるか ボロボロに崩れても…「自分たち信じて」
指揮官のアイデアを具現化する存在
シーズン序盤は輝きを放ったが、負傷離脱もあってフル稼働できず。大迫、チームともに苦しい戦いが続いた 【Getty Images】
昨季までチームの主軸として活躍していたのは元ドイツ代表FWマックス・クルーゼ。固定のポジションにとどまらず、ピッチを縦横無尽、至るところに顔を出す神出鬼没な動きが特徴的な選手だ。相手からすれば動きをつかみ取るのが難しい。一方で、味方にとっても距離感や攻守における決まり事を調整しづらい厄介さも併せ持つ。
そのため戦術的規律が厳しいチームだと、なかなか本領発揮ができないでいたが、ブレーメンのフローリアン・コーフェルト監督は、そんなクルーゼの長所を最大限に引き出すためにチームの戦い方を整理していった。
ボールを持ったらクルーゼを探す。クルーゼがボールを持ったらサポートをする、スペースに走り出す。キャプテンに指名し、責任感を持って取り組むように刺激したことで、ポジティブな相乗効果も生まれてきた。ブンデスリーガでも髄一のコンビネーションサッカー。チームは昨シーズン、ヨーロッパリーグ出場まであと一歩というところまで迫り、「今季はそれ以上の成績を!」という心地良い高揚感が、ブレーメンファンの間にはあった。
そんなクルーゼが今夏トルコのフェネルバフチェへと移籍。大黒柱の離脱に地元メディアは「どうやってその穴を埋めるのか」と騒ぎ出す。だが、コーフェルト監督はこの移籍をそこまで悲観的に捉えず、むしろよりバリエーション豊富なコンビネーションサッカーへとチャレンジするためのきっかけとして考えていた。
指揮官には、はっきりとしたイメージが描けていたのだ。ブレーメンは大迫とともに、さらにバージョンアップすることができると。常々「ユウヤは狭いスペースでもいつでも解決策を見いだし、空いたスペースでうまく動くことができる。ゴールを背に向けてプレーするクラシカルなFWではなく、常に裏へ動けるFWだ。非常にクリエイティブで決定的なパスを出せ、自分自身でも決めることができる」と最大限の評価を繰り返していた。さまざまな状況、システムに瞬時に対応してみせる大迫は、コーフェルト監督のアイデアを具現化するために欠かせない存在なのだ。
「もちろん、責任感はすごく感じていますし、さらにもっとチームを助けられるようにしたいなと思っています」
大迫も自身が担う新しい役割を自覚し、新シーズンに並々ならぬ意欲で準備していた。そして序盤はその通りの活躍を見せる。
あまりにも痛かった大迫の戦線離脱
ドイツカップ1回戦デルメンホルスト戦後にコーフェルト監督はあらためて絶賛していた。リーグが始まっても大迫は攻撃の軸として機能していく。大迫の動き出し、ポジショニングをチームメートは常に視界の先に入れておこうと意識しているので、すっとパスが入ってくる。相手がつぶそうと体をぶつけてきても、大迫はびくともしない。懐にボールを収めては、鋭いターンで相手マークを外し、ボールを展開していく。足を止めずにすぐゴール前に向かって動き直し、「ここ!」というタイミングで飛び込んでいく。
さらには監督の要求通りのプレーを高いレベルでこなすことができる。試合展開とともに、指揮官は次々に攻撃のカードを切る。システムを変化させ、選手のポジションを置き換えていくことで、推進力を生み出そうとする。大迫はFW、トップ下、インサイドハーフ、ボランチへとポジションを移しても、チームに求められるプレーに汗をかき、チャンスメークに貢献し、そして、どこからでもゴールを狙うために走り込む。
第3節アウグスブルク戦では2ゴールをマークし、チームの初勝利に貢献。ファンは大迫コールを叫び続けた。
「すごくスタジアムの雰囲気が良かったですし、その中でチームが何より勝てたことがすごく自分の中で大きくて、その中で少しでも助けになれたということは誇りに思います。これを続けていきたいなと強く思いました」(大迫)
続く第4節ウニオン戦では粘り強い戦いで2-1と勝利し、その言葉通り、ここからどんどん調子を上げて、勝ち点も積み重ねていくかと思われた。だが、9月19日、大迫はトレーニング中に太ももを負傷してしまう。ただでさえ主力にケガ人が多く出ていたブレーメンにとって、その離脱はあまりにも痛かった。第5節ライプツィヒ戦からリーグ13試合でわずかに1勝しかできていない。
「すごくハードな日々が続いたので、その中で負傷したことがすごく残念でしたけど、常に自分の中でポジティブに考えるようにしていました。思ったより早く復帰できたので良かったかなと思います」(大迫)