- スポーツナビ
- 2019年10月5日(土) 15:20
欧州5大リーグでトップの観客動員数

ブンデスリーガのメディアツアーの初日(現地時間4日)、向かったのはバイエルン・ミュンヘンの本拠地アリアンツ・アレナだ。ブンデスリーガのシンボルと言えば、やはり盟主バイエルン。ブンデスリーガがわれわれ日本メディアに最初に見せたい場所が、ブンデスリーガのオフィスではなく、アリアンツ・アレナというところに、バイエルンの存在の大きさを感じずにはいられない。まさにドイツサッカーの誇りと言っていいだろう。
アリアンツ・アレナではスタジアム・ミュージアムツアーなどの定番コースも堪能したのだが、今回は「ブンデスリーガ・ワークショップ」で学んだことを紹介したい。簡単に言えば勉強会、意見交換会だ。ブンデスリーガの現状、そして成功の秘訣(ひけつ)を説明してくれたのは、ブンデスリーガ・インターナショナルの国際部門でマネジャーを務めるダニエル・パーカー氏、そしてシンガポールオフィスのジーン・スーン氏だ。

まず、ブンデスリーガの魅力として、欧州5大リーグ(ブンデスリーガのほかに、プレミアリーグ、ラ・リーガ、セリエA、リーグアン)の中で、1試合あたりの平均得点(3.18)が最も高い、つまり攻撃サッカーが展開されていることが挙げられた。さらに、育成に力を入れることで、若く優秀な選手が多く育っているという報告が続く。そして、それらが成功につながっていることを証明するのが、観客動員数の実績だ。
ブンデスリーガの2018-19シーズンの平均観客数は4万4000人。これはプレミアリーグの3万8000人を抑え、欧州主要リーグのトップである。7つのクラブで平均観客数が5万人を超えており、バイエルンやドルトムントといった一部の強豪だけではなく、リーグ全体が活況を呈しているという。
昨今の欧州サッカーシーンを見渡すと、スペインの2強(バルセロナ、レアル・マドリー)、外国資本が次々と参入したプレミアリーグ勢が、人気、実力において、トップランナーであることは間違いないだろう。しかし、プロスポーツにとって、成長のための最大の源泉となるのは集客力だ。この点においては、ブンデスリーガは他リーグと比べて一日の長がある。
ブンデスリーガが立見席を設置する理由

集客力の秘密はチケットの価格、安さだ。ブンデスリーガのチケット平均価格は26ユーロ(約3000円)と、欧州でも最も安いという。パーカー氏が説明する。
「例えば、英国のファンがブンデスリーガを観戦しようとしたら、フライト、そしてチケット、食事にビールと費用がかかるわけですが、それらをトータルしてプレミアリーグのチケット代と同じくらい。それだけブンデスリーガのチケットは安いということ」
もちろん、席種によって価格はさまざまだが、最も安い立見席では11ユーロ(約1200円)と破格だ(日本で言えば映画に行くよりも安い!)。そして、この立見席こそが重要なファクターになっている。

アリアンツ・アレナにはゴール裏を中心に9000席と7000席、合計1万6000の立見席がある。収容人数は7万5000人であるから、全体の20%以上が立見席ということになる。それほどまでに立見席を多くするのはなぜか。もちろん、そこには理由がある。パーカー氏が言う。
「プレミアリーグに立見席はありません。ですが、われわれブンデスリーガではあらゆるファン層にスタジアムに来てもらうことを、各クラブが重要視しています。(経済力の差によって)スタジアムに行けない人をつくってはならない。どんな人にも来てもらえるような価格を設定しているのです」
これはJリーグにない発想だろう。Jリーグでは規定で立見席が認められていない。しかし、ブンデスリーガは公式として「立見席を設けてもよい」というスタンスを取っている。チケットはリーグ一括管理しているわけではないが、各クラブは前述したように、どのファン層にもスタジアムに足を運んでもらうための施策として、立見席を設けて価格を抑えている。その効果が観客動員に表れているのだ。
そうしたチケット施策、攻撃サッカーの魅力も相まって、年間シートの売れ行きも好調だ。ブンデスリーガで最もチケットが入手困難と言われるドルトムントでは5万5000席(収容人数8万人)の年間シートが常に完売。バイエルンでは3万8000席が年間シートで押さえられている。最も安い立見席なら145ユーロ(約1万7000円)で楽しめるのだからお得だ。ちなみに、バイエルンの年間シートは年度更新が自動になっており、ほぼ全員がリピートするため、新規で買えるのは毎年10人程度だという。プラチナチケットである。