変わりゆく今治とデロイトトーマツの関係
KWは「スポンサーアクティベーション」

単なる「胸スポンサー」ではなくなったデロイトトーマツ

今治のトップパートナーとして知られるデロイトトーマツ。ここに来て新しいスポンサーシップの試みが始まっている
今治のトップパートナーとして知られるデロイトトーマツ。ここに来て新しいスポンサーシップの試みが始まっている【宇都宮徹壱】

 7月21日にありがとうサービス.夢スタジアム(夢スタ)で取材したJFL第16節、FC大阪戦から1カ月が過ぎた。本題に入る前に、その後のFC今治について確認しておこう。7月27日に予定されていた首位Honda FCと2位今治との直接対決(アウェー)は、台風6号の影響のため中止。中断期間を経て8月25日に行われた松江シティFC戦(アウェー)は1−1のドローに終わった。この1カ月で積み重ねた勝ち点は、わずかに1。それでも1試合未消化で、3位に2ポイント差の2位を堅持している。


 さて今回の取材先は、今治の夢スタではなく、東京・丸の内のオフィス街。皇居のお堀を臨むビルにオフィスを構える、デロイトトーマツグループに赴いた。デロイトトーマツといえば、国際的なネットワークを持つ、監査、税務、法務、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリーなどを専門とするプロフェッショナルコンサルティングファームで、社員数は1万2000人以上。最近ではスポーツビジネスの領域にも進出し、全Jクラブの経営効率や経営戦略、さらには財務状況などのビジネスマネジメントを数値化した、年次レポート(Jリーグマネジメントカップ)を発表していることでも知られている。


 われわれサッカーファンにとってのデロイトトーマツといえば、やはり「FC今治のトップパートナー」としてのイメージが強い。今治は岡田武史代表になって、最初のシーズンとなった2015年から一貫して、デロイトトーマツのロゴをユニホームの胸に付けている。しかしながら四国リーグでの露出に、どれほどの広告価値があったのかという疑問は、個人的にずっとくすぶっていた。そんなクラブとスポンサーとの関係性も、最近は少し変わってきていると聞きつけて、デロイトトーマツ本社を訪れた次第。キーワードとなるのは「スポンサーアクティベーション」である。


「いわゆるスポンサーって、いくつかのパターンがあると思います。よく知られているのが、タニマチ的な心意気で応援したり、普通の企業広告を目的としていたりするものですよね。それとは別に、最近はスポンサーアクティベーションという形が増えてきたように感じます。当社はそのパターンで、今治と何かを一緒に取り組むことで、何かしらの社会問題が解決される。あるいは、そこで得られた知見で新たなビジネスを展開する、といったことを目指しています」

観戦体験とは「チケット購入から家に帰るまで」

デロイトトーマツ執行役員の宮下剛さん(左)とシニアマネージャーの森松誠二さん。今回のプロジェクトを主導した
デロイトトーマツ執行役員の宮下剛さん(左)とシニアマネージャーの森松誠二さん。今回のプロジェクトを主導した【宇都宮徹壱】

 そう語ってくれたのは、デロイトトーマツのシニアマネジャーの森松誠二さん。森松さんは、執行役員の宮下剛さんをリーダーとするグループで、このほど『スポーツ観戦体験グローバル調査レポート‐サッカー編‐』を発表している。概要を簡単に説明すると、ドイツと米国と日本における「スポーツ観戦の推奨度をシーン別の体験に分解して分析する」というもの。試合の情報を知った時から、試合翌日以降までの観戦者の体験を14項目に分けて、どの体験をもって家族や友人・知人にスタジアム観戦を勧めるか、あるいは勧めないか、顧客サービスの課題を明らかにするという。

「サッカーの本場」であるドイツ、そして「スポーツビジネスの本場」である米国。これら2カ国と日本を比べてみると、いろいろ興味深いものが見えてくる。ドイツの場合は「試合の観戦」が推奨度への影響でマックスの100だったが、次いで多かったのが「試合当日の競技場までの移動」で78。米国の場合は「試合観戦までのチーム情報や試合情報の収集、メールなどの受信」が100で「試合の観戦」は48だった。


 日本の場合もドイツと同様「試合の観戦」が100で最も高かったのだが、それ以外の項目での山がなかったのが特徴的。米国は試合前にピークがあり、ドイツは試合前と試合後にも盛り上がりがある。そこから読み取れるのは「日本の国内サッカーでは、試合以外で楽しめる要素が限られている」というものであり、逆に言えば「そこに観客をもっと楽しませる潜在的な要素があると見ることも可能です」と森松さん。そして、こう続ける。


「ある時に岡田さんとお話する機会があって、この調査報告をお見せしたら身を乗り出すように興味を示していただきました。もともと夢スタのフットボールパーク構想というのは、試合に勝っても負けてもお客さんに喜んで帰ってもらえることが、発想の原点にありました。でもそれは、スタジアムとその周辺限定なんですね。そこで私は『実はチケットを買ってからスタジアムに向かうまで、そして試合観戦を終えて家に帰ってからも、われわれは観戦体験と定義しています』と申し上げたんです。そうしたら岡田さんは『そうか、そこまではまったく考えていなかった!』とおっしゃったんですね」

宇都宮徹壱
宇都宮徹壱

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著はスポーツナビでの連載をまとめた『J2&J3 フットボール漫遊記』(東邦出版)

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