変わりゆく今治とデロイトトーマツの関係 KWは「スポンサーアクティベーション」
単なる「胸スポンサー」ではなくなったデロイトトーマツ
今治のトップパートナーとして知られるデロイトトーマツ。ここに来て新しいスポンサーシップの試みが始まっている 【宇都宮徹壱】
さて今回の取材先は、今治の夢スタではなく、東京・丸の内のオフィス街。皇居のお堀を臨むビルにオフィスを構える、デロイトトーマツグループに赴いた。デロイトトーマツといえば、国際的なネットワークを持つ、監査、税務、法務、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリーなどを専門とするプロフェッショナルコンサルティングファームで、社員数は1万2000人以上。最近ではスポーツビジネスの領域にも進出し、全Jクラブの経営効率や経営戦略、さらには財務状況などのビジネスマネジメントを数値化した、年次レポート(Jリーグマネジメントカップ)を発表していることでも知られている。
われわれサッカーファンにとってのデロイトトーマツといえば、やはり「FC今治のトップパートナー」としてのイメージが強い。今治は岡田武史代表になって、最初のシーズンとなった2015年から一貫して、デロイトトーマツのロゴをユニホームの胸に付けている。しかしながら四国リーグでの露出に、どれほどの広告価値があったのかという疑問は、個人的にずっとくすぶっていた。そんなクラブとスポンサーとの関係性も、最近は少し変わってきていると聞きつけて、デロイトトーマツ本社を訪れた次第。キーワードとなるのは「スポンサーアクティベーション」である。
「いわゆるスポンサーって、いくつかのパターンがあると思います。よく知られているのが、タニマチ的な心意気で応援したり、普通の企業広告を目的としていたりするものですよね。それとは別に、最近はスポンサーアクティベーションという形が増えてきたように感じます。当社はそのパターンで、今治と何かを一緒に取り組むことで、何かしらの社会問題が解決される。あるいは、そこで得られた知見で新たなビジネスを展開する、といったことを目指しています」
観戦体験とは「チケット購入から家に帰るまで」
デロイトトーマツ執行役員の宮下剛さん(左)とシニアマネージャーの森松誠二さん。今回のプロジェクトを主導した 【宇都宮徹壱】
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日本の場合もドイツと同様「試合の観戦」が100で最も高かったのだが、それ以外の項目での山がなかったのが特徴的。米国は試合前にピークがあり、ドイツは試合前と試合後にも盛り上がりがある。そこから読み取れるのは「日本の国内サッカーでは、試合以外で楽しめる要素が限られている」というものであり、逆に言えば「そこに観客をもっと楽しませる潜在的な要素があると見ることも可能です」と森松さん。そして、こう続ける。
「ある時に岡田さんとお話する機会があって、この調査報告をお見せしたら身を乗り出すように興味を示していただきました。もともと夢スタのフットボールパーク構想というのは、試合に勝っても負けてもお客さんに喜んで帰ってもらえることが、発想の原点にありました。でもそれは、スタジアムとその周辺限定なんですね。そこで私は『実はチケットを買ってからスタジアムに向かうまで、そして試合観戦を終えて家に帰ってからも、われわれは観戦体験と定義しています』と申し上げたんです。そうしたら岡田さんは『そうか、そこまではまったく考えていなかった!』とおっしゃったんですね」