連載:日本バスケの歴史を変える男の物語

八村塁はアメリカで何を手に入れたのか いまや誰もが認めるチームリーダーへ

丹羽政善
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ホームでの“長湯”には理由がある

いまや誰もが認めるチームリーダーとなった。しかし、渡米直後の八村塁は孤立していたという…… 【Getty Images】

 アール・デコ、ネオ・ルネッサンス、新古典主義といった、なぜか建築様式の異なる建物が乱雑に立ち並ぶダウンタウンの北側を、ゆったりとスポケーン川が流れる。

 川沿いに総延長40マイルというトレイルがあるが、街からゴンザガ大までは、そのトレイルを東に歩いて20分ほど。車両の通行が禁止されている小さな橋を渡ると、バスケットボールチームのホームアリーナであるマカーシー・アスレチック・センターが見えてくる。

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 通称“ケンネル”。

 犬小屋という意味だが、ゴンザガ大のマスコットキャラクターがブルドックであることに由来する。

 そのケンネルで試合が行わるとき、八村塁は試合後に、ゆっくりとジャグジーにつかる習慣がある。他の選手はすでにシャワーを浴び、もう着替えて帰ろうかという頃になってようやく、タオルを腰に巻いてロッカーに戻ってくる。

 ある時、チームメイトの1人が、「あいつのジャグジーは長い。呼んできてあげようか?」と言ってくれたことがあったが、もちろん“長湯”には理由がある。
 
「落ち着くんですよ。試合の後はまだ興奮しているので、寝られないことがあるんですけど、(ジャグジーに)入るとよく眠れる」

 八村はそう言って、続けた。

「アウェーのときは(ジャグジーに)入れないので、眠れないことが多いんですけど、ホームのときは普通に寝られますね」

 実際、効果があるそうだ。元筑波大学野球部部長で、高分解能MRI診断研究、コーチング学、スポーツ工学など幅広い分野の知識を持つ医学博士の馬見塚尚孝さんに聞くと、「高齢者や、動脈硬化または心血菅系に問題のある方にはリスクとなる可能性がある」と断った上で、「ちょっと熱めの温泉に入ると(眠りにくい)夏でも睡眠深度が改善する研究報告がある」と説明した。
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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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