大阪桐蔭、“修正力”で花園初優勝 「ラグビー人生最高の試合に」

斉藤健仁

「君たちが日本一、おめでとう」

大阪桐蔭が“桐蔭対決”を制して花園初優勝に輝いた 【斉藤健仁】

 大阪桐蔭が見事なアタックとディフェンスの修正力を見せて初の花園優勝に輝いた。
 第98回を迎えた「花園」こと全国高校ラグビー大会は、1月7日、大阪・東大阪市花園ラグビー場で決勝戦が行われた。昨年度準優勝で涙をのんだ大阪桐蔭(大阪第1)と春の選抜2連覇中の桐蔭学園(神奈川)のAシードの“桐蔭”同士の激突となった。

 序盤から点の取り合いとなったが、白のジャージの大阪桐蔭がFWの圧力とディフェンスで上回り26対24で勝利し、13回目の出場にしてうれしい初優勝を飾り、平成最後の高校チャンピオンとなった。なお平成30年間の中で、15年間は大阪の高校が優勝したことになる。

 今シーズンの大阪桐蔭のスローガンは「越」だった。まさしく、昨年度の決勝を内容でも結果でも上回った。同校のOBでもある綾部正史監督は「昨年度の準優勝の結果がすべてで、この1年、(負けた悔しさを)エネルギーに変えてしっかりできたので、そこを越えられた。君たちが日本一、おめでとうと言いたい」と目を赤くした。

FL奥井らを軸にしたアタックが機能

FL奥井(左)をスクラムのSH役にした攻撃が効果的だった 【斉藤健仁】

 昨年度の花園では準決勝で対戦し、大阪桐蔭が桐蔭学園の64次に渡る攻撃を防ぎ切り12対7で勝利。だが、新チームとなり、昨年4月の選抜大会決勝では桐蔭学園が7トライを挙げて46対26で快勝していた。そのため天候は晴れで風もあまりなく、芝生のコンディションも良かったため、花園の決勝もFWとBK一丸となり「継続ラグビー」が武器の桐蔭学園がやや有利かと見ていた。

 ただ春のリベンジと初優勝に燃える大阪桐蔭は冷静だった。「敵陣に入ってからFWで攻めて、時間を掛けながらですが、モールは嫌がるだろうなと思っていました。そこは私の感覚と選手の感覚は一致していた」とモールを軸に攻撃することを決めていた。またボールを展開すればSH萩原周(2年)からのワンパスを、「怪物」FL奥井章仁、PR江良颯(ともに2年)、CTB松山千大主将(3年)と推進力ある強いランナーにボールを集めて前に出続けた。

 大阪桐蔭の準備していたアタックが最初から機能する。「今年はFWとBKのバランスがいい」と指揮官が自負していたように、ラインアウトとFL奥井をSHに入れて工夫したスクラムを起点にFWが前に出てBKがサインプレーから展開し、7分、13分とBKが2トライを挙げて12対0とリードすることに成功した。

初の単独優勝を狙う桐蔭学園の反撃

桐蔭学園のSH小西主将は自身の突破、鋭いパスで何度もチャンスを作り出した 【斉藤健仁】

 しかし、初の単独優勝に意地を見せる、今年度、高体連主催の大会で無敗だった桐蔭学園も負けていない。前半残り10分でモールからのサインプレーや、ポッド・アタックでボールキャリーに長けたHO紀伊遼平をサイドに残す攻撃を見せて3トライを挙げて、大阪桐蔭は12対17とリードされて前半を折り返す。

 6度目の決勝進出となった桐蔭学園の藤原秀之監督は大阪桐蔭に勝つためには「5トライを取れるかが鍵」と分析していた。相手のFWが強力で、FWの平均体重で4キロほど軽かったこともあり、モールでやられることも想定していた。前半もしっかり3トライを重ねて、後半も2〜3トライを取れれば優勝できるという想定だった。

 ここで大阪桐蔭の綾部監督はハーフタイムに「連続のアタックをされた時、1人目があまりポイントに寄りすぎないようにと、組織力では桐蔭学園の方が上だったのでFW2列目、3列目の選手たちがどれだけカバーできるか」とディフェンス面での修正を指示。それが的確だった。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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