大阪桐蔭、“修正力”で花園初優勝 「ラグビー人生最高の試合に」

斉藤健仁

威力を発揮した「カウンターラック」

組織力に優れた桐蔭学園の攻撃を、激しいタックルで止め続けた 【斉藤健仁】

 大阪桐蔭の選手たちはその指示通り動いて、後半開始、最初の桐蔭学園のワイドにボールを動かす猛攻を何とかしのぎ切った。するとチャンスは大阪桐蔭にやってくる。相手のラインアウトのミスもあり、敵陣へ。モールでじわじわ攻めて、7分にPR江良が押さえて、SO嘉納一千(2年)のゴールも決まり19対17と逆転に成功する。

 その後は、大阪桐蔭は自陣からも攻めてくる桐蔭学園のラックにプレッシャーをかけて、乗り越えたり、相手の反則を誘ったりと計6度のターンオーバーに成功したことが趨勢を決めた。ディフェンスの勝利だった。桐蔭学園はポッドでボールを大きく、広く動かしてくるため、ラックには3人ほどとあまり人数を掛けてこないことは分析済みだったという。

 大阪桐蔭は春の選抜で、タックルが甘く、接点での「セカンドマンレース」に負けて大敗した反省から、タックルを磨き、週2回のアタック&ディフェンスの練習でしっかり2人目の寄りの意識を高めた。「(カウンターラックで)取れるところはチャレンジしていいと言っていました。選手が判断しました。自分たちの目標のため日頃やっていることをやってくれた」(綾部監督)。
 後半17分のモールからFL奥井が取ったトライも、カウンターラックで乗り越えて相手の反則を誘い、敵陣奥に入ったことで生まれた。

終了間際のCTB高本のビッグタックル

攻守に活躍したCTB高本幹也。終了間際には値千金のタックルを決めた 【斉藤健仁】

 そして「CTB陣はうちの要」と指揮官が、CTB松山主将とともに頼りにしていたインサイドCTB高本幹也(3年)が「嫌いだった」というタックルで大仕事をやってのける。この試合、高本は桐蔭学園の外のアタックを遮断するために、何度も極端に前に出るアンブレラディフェンスをしかけていた。

 桐蔭学園に後半28分、1トライを返されて迎えたロスタイム、自陣からでも大きく外に振ってきた相手に、CTB高本がタックルで前に出て相手のファンブルを誘い、そのまま味方がボールを乗り越えてターンオーバー。値千金のタックルを決めたCTB高本は「どんぴしゃ(のタイミング)だった。勇気がいったけど、外が余っていたので自分の判断でいった」と胸を張った。

FL奥井「チーム全体でも100点のプレーができた」

2年生ながらチームの中心として驚異的なパワーを発揮したFL奥井 【斉藤健仁】

 最後はFWで時間を使ってボールを蹴り出して、26対24でノーサイドの瞬間を迎えた。春の選抜で46点を取られ、花園に入ってからも平均50得点を挙げていた桐蔭学園のアタックを24点で抑えたことが勝因となった。綾部監督は「春の選抜のスコアよりもディフェンスで粘り勝ってくれたので良かった。最後までやり抜いてほしいと子どもたちを信じていました。タフな3年生になった」と選手たちの成長に目を細めた。

 CTB松山主将は「ラグビー人生最高の試合になりました! しっかりディフェンスにどれだけいくかがキーだったので、後半は修正できた。1年間、日本一になるためにやってきたので結果につながって良かった」と喜びを爆発させた。またボールキャリアとしてチームを引っ張ったFL奥井も「松山キャプテン中心にしんどいことやってきて、自分自身もうれしいし、チーム全体でも100点のプレーができた」と大きな笑顔を見せた。

 ワールドカップイヤーの2019年の新春、新しくなった花園ラグビー場で、「白い旋風」が無敗のまま頂点まで駆け抜けた。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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