戦術、歴史…神戸製鋼を復活させたもの 「形をつくればトライが取れる」
3連覇を狙うサントリーを決勝で圧倒
トップリーグでは15季ぶりの優勝を果たした神戸製鋼 【斉藤健仁】
過去のトップリーグで2003年度の優勝以降はベスト4に進出すること6回もなかなかチャンピオンに手の届かなかった神戸製鋼が、なぜ“アタッキングラグビー”を標榜するサントリーのお株を奪う素晴らしいアタックを見せて優勝できたのか。まず、決戦に臨むにあたっての戦略の一貫性があった。
「システムの中でプレーするのが我々の強み」
抜群のプレーとリーダーシップでチームを引っ張ったSOダン・カーター 【斉藤健仁】
コーヒーを飲んで理解を深めたハーフ団は、相手の強みを消し自分たちの強みを出すことに努めた。ボール支配率は63%だったが、前半は72%と高く、試合を通してその戦略を貫いた。またカーターが「システムの中で、シェイプ(攻撃の形)をつくればトライが取れる。最初のトライはそれができて自信がついた。システムの中でプレーするのが我々の強み」と語気を強めたようにシステム=戦術も機能した。
スミス総監督による課題の解決方法
FW同士がショートパスを使って前に出るシーンが目立った 【斉藤健仁】
スミス総監督が導入したのはアタックではFW8人を1―3−3−1で配置するポッド・アタックだった。両端のBKシェイプにFLグラント・ハッティングと橋本大輝がそれぞれ参加、真ん中のFWシェイプの左(平島久照、トム・フランクリン、張碩煥)と右(有田隆平、中島イシレリ、山下裕史)に3人ずつ。さらにFWシェイプの後ろに浅めにSOカーターが動きながら、ダブルラインを保って「全員がオプションになり、スペースを攻める」(FB山中亮平)といった具合だ。
この戦術の形自体は日本では2013年度にパナソニックが導入、ジェイミージャパンでも採用したことから、さほど新しいものではない。現に、昨年度の神戸製鋼も同じ形だった。ただ、どうしてもミッドフィールドのFW3人がプレッシャーを受け前に出られないと両サイドのスペースが空かない。またFW3人でボールをリサイクルする必要性もあった。
そのソリューション(解決方法)として総監督はFWシェイプの中でのショートパスを多用してゲインし、素早いリサイクルを目指した。そのためFWは、春からパス練習を徹底的に繰り返した。決勝でも両CTBのパスの回数がそれぞれ10、12回だったのに対し、LOフランクリンが10回、そしてNo.8中島は16とハーフ団に次ぐチーム3番目の多さだった。