“敵将”エディー、日本への思い 「真のラグビー国になりました」

斉藤健仁

会見場でいきなり「フジタは?」

イングランド代表を率いるエディー・ジョーンズHC 【斉藤健仁】

 テストマッチ(国代表同士の国際試合)において、初めて“敵将”となったエディー・ジョーンズ氏を現場で取材する機会に恵まれた。11月18日、ラグビー日本代表(世界ランキング11位)は8万1000人の大観衆を集めた「聖地」トゥイッケナム・スタジアムでイングランド代表(同4位)と対戦した。
 FLリーチ マイケル主将を筆頭に、サントリーやエディー体制下でジョーンズHC(ヘッドコーチ)の指導を受けたことがある選手が半数という布陣だった日本代表は、かつての恩師の目の前で素晴らしいラグビーを披露し、前半は15対10でリード。だが後半はジョーンズHCが「フィニッシャーズ」と呼ぶ控え選手たちが躍動し、15対35で敗戦した。

「コンニチワ」と日本語で会見場に入ってきて、私を見るなり「フジタ(藤田慶和、今秋の欧州遠征には不参加)は?」と日本語で聞いてきたエディーさんは、イングランドに行ってもエディーさんのままだった。

 アタックと戦術コーチを自ら担当し、ディフェンス、FW、スクラムといった各パートは専門コーチを呼ぶスタイルは踏襲。2016年の就任当初からFWは日本代表時代同様にスティーブ・ボーズウィックに任せ、キッキングコーチにはかつての名SOジョニー・ウィルキンソンに頼み、6月からは日本代表のHC代行も務めた盟友スコット・ワイズマンテルもサポートし、スポットコーチとしてマルク・ダルマゾ、ジョージ・スミスが参加するなど、日本代表時代と変わらない「チームエディー」で指導にあたっていた。

苦しんでいたエディーイングランド

代表選手は過密日程に苦しみ、チームとしても結果が出なくなっていた 【斉藤健仁】

 エディーイングランドは2016年から17連勝を含む23勝22敗という好成績で、シックス・ネーションズ(欧州6カ国対抗)で連覇を達成するなど、破竹の勢いで快進撃を続けた。強固なセットプレーとディフェンスを軸に戦う「イングリッシュウェイ」を掲げて9位まで落ちた世界ランキングを2位に上げて、2019年ワールドカップの優勝候補にも躍り出た。イングランド協会もエディーとの契約を2019年から2年延長した。

 しかし、3連覇がかかった今年のシックス・ネーションズはまさかの2勝3敗で5位に沈んだ。実は2017年の夏、イングランド代表選手はブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ(英国とアイルランドの合同チーム)のニュージーランド遠征で、6週間で10試合というスケジュールをこなしていた。どうしてもイングランド選手の出場が増えて、それが心身ともに負担に……。イングランド協会はテストマッチシリーズの後に休暇を義務づけているが、ライオンズは管轄外だった。そういった過密日程の影響で、不動の1番だったPRジョー・マーラーは今秋、代表引退を表明したほどだった。

「私はワールドカップを知っている」

イングランド代表の共同主将を務めるHOディラン・ハートリー 【斉藤健仁】

 6月もバーバリアンズに45対63と歴史的大敗を喫し、南アフリカ遠征も1勝2敗と結果を出せなかったエディーは、窮地に立たされていた。あくまでもイングランド協会はエディー体制で2019年ワールドカップに臨むつもりと表明。ただ、今秋、イングランド代表はケガ人が多く、特にFWの経験値のある選手が不在であり、エディー本人も「400キャップを失ったが、コントロールできないことはしょうがない。コントロールできることをやっていく」と言うほどの状態だった。

 もし11月にホームで南アフリカ代表、ニュージーランド代表に大敗すると、日本代表戦にエディーはいないかもしれない……とまで思った。ただジョーンズHCは「私はワールドカップを知っている。2019年は4度目の大会だ。ピークをそこにもっていけばいい。この秋はスパーリングみたいなもの。必ずしもすべてのテストマッチに勝つ必要はない」と予防線を張りつつ、来年、日本で勝つことが一番だということを強調した。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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