sportsnavi

“カオス”を生み出すラグビー日本代表
世界選抜戦は「ポジティブ」な惜敗

厳しい合宿を経て、世界選抜に挑んだ日本代表

後半20分にトライを奪った日本代表WTBレメキ
後半20分にトライを奪った日本代表WTBレメキ【斉藤健仁】

 今後の「ブレイブブロッサムズ(勇敢なる桜の戦士たち)」の戦い方が見えた、そんな試合だった。ラグビー日本代表は10月26日、秋のシリーズの一戦目として、来年のワールドカップのために改修された、大阪・花園ラグビー場のこけら落としとして世界選抜と対戦した。


 一時は7対31と24点差まで広げられた。後半、追い上げを見せて3トライを挙げたが28対33で敗れた。「テストマッチ(国代表同士の試合)じゃなくて良かった」と選手たちが声をそろえたように、11月に対戦するニュージーランド代表やイングランド代表といった強豪との対戦に向けてポジティブな面も、課題も明らかになった。


 まず、前提として日本代表は走りに走っていた。9月下旬、2泊3日で行われた和歌山合宿ではボールを使わず、フィットネス練習やウェイトトレーニングに精を出した。そして日本代表選手たちはトップリーグの第7節は出場せずに、10月14日から宮崎で合宿をし、10日間ほどを準備期間に充てた。


 その1週目は「サンウルブズの別府の駐屯地での合宿を除き、今までのラグビー人生で一番きつかった」と最年長のスクラムハーフ(SH)田中史朗が言うように、ジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)は毎日4部練習というハードなトレーニングを課した。


 午前中はウェイトトレーニングやユニット練習などみっちり4時間ほど練習し、午後の全体練習では45〜50分ほど、ほとんど休みなくアタック&ディフェンスを行っていた。その練習の意図はメンタル強化と80分間、高い強度で一貫性を持ったプレーをすることにあった。

勢いをつけ、混沌を生み出すための工夫

試合前の練習で気合の入った表情を見せるジョセフHC
試合前の練習で気合の入った表情を見せるジョセフHC【築田純】

 話を試合に戻そう。合宿からラグビー面で強調されていたのは「モメンタム(勢い)をつける」ことと「カオス(混沌)を作り出す」ことだった。モメンタムをつけるとは、6月のシリーズで失点の多かった試合の入りと後半の入りに自分たちから仕掛けること、また6月は攻撃時にアタックラインが停滞しがちだったため、FWもBKもオフロードパス(タックルされながらのパス)も積極的に使って勢いを持ってアタックすることにあった。


 またカオスを作り出すとは、ジェイミージャパンが今までやり続けている、コンテスト(相手と競る)キックを使いつつ、「アンストラクチャー(崩れた局面)を組織化する」ラグビーをより精度高くやることにあった。また今までのようにターンオーバー後、大きく左右に振るのではなく、一度、中央にラックを作って、しっかりと左右に「シェイプ(攻撃の型)」を作って攻めることにも主眼が置かれた。これは、世界の強豪相手ににターンオーバー後、大外で相手に奪い返されると、すぐに失トライに結びついてしまうことを避ける狙いもあったはずだ。


 いきなり、試合開始早々から「カオスを作り出す」ことと「モメンタムをつける」場面が出た。相手のキックオフ直後、スタンドオフ(SO)田村優は自陣からハイパントキックを挙げ、相手がボールをキャッチするとすぐに日本代表はラックを乗り越えて相手のペナルティを誘った。そのボールをクイックリスタートして勢いよく攻め続け、相手ゴールラインまで迫る。その後も攻撃を継続するものの、世界選抜の強固なFWの前にトライを挙げることができなかった。


 プロップ(PR)稲垣啓太は「僕個人の役割としては勢いをつくり出すこと、でした。僕らがしっかり前に出ることでFW内だけでも近場でチャンスが生まれた。(ゴールライン手前)5mまでは行けたが、そこから攻撃が一辺倒になった。もう少しオプションのバリエーションがあっても良かった」と悔やんだ。この一連のアタックでトライを挙げてさえすれば、流れは大きく変わったに違いない。

ディフェンスの課題が明らかに

体の大きな世界選抜に前に出られる場面も。ディフェンスに課題が残った
体の大きな世界選抜に前に出られる場面も。ディフェンスに課題が残った【斉藤健仁】

 ここからは名将ロビー・ディーンズHCが率いる世界選抜がうまさを見せる。日本代表の前に出るディフェンスに対し、大きなFWがしっかりと接点で前に出てテンポ良くアタックし、日本代表のディフェンスをなかなか前に上がらせないように策を打ってきた。大きなFWの選手に対して接点でファイトすることが、ディフェンスラインの上がりにもつながる。タイミングを早く、そしてギャップを作らないことが求められる。


 またラインアウトからもループプレーを使い、大きく速く展開することで、外のスペースを突かれて、BK陣のタックルの甘さもあって10分、15分と2トライを許し0対12とリードされてしまう。ディーンズHCが「日本代表にとって、これからのテストマッチに向けて良い準備になったのでは」と発言したように、前に出るディフェンスの弱点を的確に突いたというわけだ。新しい選手も多く、コミュニケーションが取れていない場面もあった。

斉藤健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。 学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「世界最強のゴールキーパー論」(出版芸術社)、「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)など著書多数。最新刊は「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版/2017年11月刊)。

スポナビDo

イベント・大会一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント