オランダ代表は“暗黒”から完全復活へ ネーションズリーグで示した確かな強さ
因縁の相手フランスから勝利
16日、オランダ代表はメンフィス・デパイ(写真)がPKを決めるなど、2−0でフランスに快勝した 【写真:ロイター/アフロ】
今回の“2−0”というスコアも試合内容を正確に反映してない。枠内シュートはオランダが12本、フランスは2本。試合後、フランスのディディエ・デシャン監督が「GK(ウーゴ・)ロリスのおかげで試合になった」と振り返ったほどのワンサイドゲームだった。オランダはもっとゴールを重ねていてもおかしくなかった。
オランダにとってフランスは因縁の相手だった。ここ4年半でオランダは5度もフランスと戦い全敗していたのだ。2014年3月、サンドニで0−2の完敗を喫した試合は「このままの戦い方を続けていたら、ブラジル・ワールドカップ(W杯)でオランダは大変なことになる」とルイ・ファン・ハール監督(当時)の目を覚まさせ、5バックに移行するきっかけとなったほどだった。
ファン・ハールは14年W杯でオランダを3位に導いた。しかし、その後のオランダは16年ユーロ(UEFA欧州選手権)、18年ワールドカップ(W杯)ロシア大会の出場を逃した。この短い期間にフース・ヒディンク監督、デニー・ブリント監督の首が飛んだ。オランダサッカー協会(KNVB)はロシア行きにいちるの望みをかけてディック・アドフォカート監督を抜てきしたが、オランダは17年9月のW杯予選で、フランスに0−4と討ち死にしてしまった。
ここ4年のオランダの暗黒史を記すなら、フランス戦での5連敗は大きく割かれるものになるはずだ。今後、オランダが本当の意味で復活を遂げる日が来たら、今回の2−0の勝利もまた、歴史に残るものになるだろう。
フレンキー・デ・ヨングを中心とした布陣
若手、中堅、ベテランとバランスの取れたチームの中で21歳のフレンキー・デ・ヨング(写真左)は中心的存在となっている。(同右はマタイス・デ・リフト) 【写真:ロイター/アフロ】
フレンキー・デ・ヨング(アヤックス)というMFの逸材がいることで、そう簡単にオランダがボールを失うことはなくなり、それがイニシアチブを握る戦い方にスイッチさせたのだろう。なにせ、フレンキー・デ・ヨングは10秒先の世界まで見ることができるMFだ。ボールを持つ、ドリブルする、シンプルにたたくことの選択が秀逸で、「彼がいることで、チームも個々の選手も良くなる」とMFジョルジニオ・ワイナルドゥム(リバプール)が絶賛するほどのゲームメークを見せる。
もしかすると、フレンキー・デ・ヨングのブレークによって、一番大きな恩恵を受けているのはワイナルドゥム自身ではないだろうか。リバプールでのパフォーマンスをコンスタントにオランダ代表に還元できなかったワイナルドゥムは、フレンキー・デ・ヨングの出現によって、コントローラーから攻撃的MFに位置を変え、ボールを持たない場面での積極的なフリーランニングが効くようになった。これが、オランダにエネルギーとスピードを与える源となっている。
アヤックスも最近、ドニー・ファン・デ・ベークという、フリーランニングを得意とするアスレティックなMFが活躍している。コントロールMF2枚のうち1枚をフレンキー・デ・ヨングにし、トップ下に相手ペナルティーエリア内に貫通していくMFを置く戦術は、CLでサプライズを起こしているアヤックスと、ネーションズリーグでサプライズを起こしているオランダに共通するものだ。
フレンキー・デ・ヨングとワイナルドゥムが中盤に芯を作ったことで、3トップが躍動している。右からスティーブン・ベルフワイン(PSV)、メンフィス・デパイ(リヨン)、ライアン・バベル(ベシクタシュ)と並ぶ3トップはアクションが大胆だ。スピード感と躍動感にあふれ、ゴールとチームへの情熱がほとばしり、ボールを持つ喜びを発散させている。カクテル光線を浴びながらピッチに発散させる彼らの熱量はすさまじい。この中にターゲットマンはいないが、その弱点を補って余りある連携が、彼らの中に生まれている。