「試合は」面白いネーションズリーグ オランダ再建を支えるCLの尊い経験

中田徹

内容は紙一重だったが、結果的にはオランダがドイツを3−0の大差で破った 【写真:ロイター/アフロ】

「無意味なタイトル」と揶揄(やゆ)されるネーションズリーグだが、試合はかなり面白い。9月にフランス対オランダ(2−1)、10月にベルギー対スイス(2−1)、オランダ対ドイツ(3−0)を現地で観戦したが、いずれもアタリだった。

試合内容から見えた各国の現在地

 よく「欧州のワールドカップ(W杯)予選は厳しい」と言われるが、実力差が大きい試合も多く、あらかじめ結果が分かってしまうような「ミスマッチ」も多数ある。オランダがロシア大会を逃したのは、欧州予選の厳しさに負けたのではなく、単に実力不足だったからだと、私は思っている。

 ネーションズリーグの中には大差がついてしまった試合もあるが、少なくとも私が見た3試合は、すごい内容ばかりだった。実力が拮抗(きっこう)している者同士の公式戦はやはり面白い。スイスの主力はロシア大会の頃からあまり変わっていないが、むしろ今回の方がすごみはあった。「スイスにまず、称賛の言葉を贈りたい」。それがベルギー代表ロベルト・マルティネス監督の試合直後の一声だった。

 一方、ドイツはロシア大会から始まった悪い流れを断ち切れていない。オランダの前線のスピードに最終ラインが翻弄される様は、世代交代の必要を感じさせたが、それでもチャンスの数ならドイツに軍配が上がった。オランダからすれば3−0という大勝だが、内容は紙一重の差だったと思う。

 面白いのは、オランダとドイツのサッカーが逆転したことではないだろうか。後半だけの比較なら、圧倒的にドイツが押していた。しかし、最後にダメ押し点を決めて勝ちきったのはオランダだった。「最後に勝つのはオランダ」。そんなウイナーズメンタリティーがオランダに宿っていた。もうオランダはポゼッションにも、攻撃サッカーにもこだわってない。今は、ボールを奪った直後に、いかに縦に速いサッカーを仕掛けるかがテーマだ。

 まだ11月のフランス戦、ドイツ戦の2試合を残すオランダだが、2018年をポジティブなムードで終えようとしている。なにせ、ネーションズリーグだけでなく、親善試合でもポルトガル、イタリア、イングランド、ベルギーという強豪国ばかりが相手で、「下手をすれば2018年のオランダ代表は全敗で終わる。そんなハズレくじを引きたくないから、オランダ代表の新監督選びは難航するだろう」とすら言われていたのだ。

親善試合の取り組み方が変わったオランダ

若手が伸び盛りのオランダ代表の見通しは明るい 【写真:ロイター/アフロ】

 だが、オランダはポルトガルに3−0と快勝し、イタリアと1−1で引き分け、10月16日にはFIFAランキング1位(10月19日現在)のベルギー相手に1−1で試合を終えた。たかが親善試合と言ってしまえばそれまでなのだが、5バック戦術を軸に戦うオランダの試合からは「変わらなければ」という必死な思いが伝わってきた。

 かつて、私は「オランダの親善試合は“点呼”のようなもの。ビッグリーグのクラブで主力として活躍する選手たちが、母国の4−3−3のサッカーに懐かしさを感じながら楽しくサッカーをする。本気なのは前半の45分間だけ。後半のオランダは流す」といった内容の記事を頻繁に書いていた。

 しかし、時代は変わった。親善試合に対してオランダの選手たちは真剣に取り組むようになり、ベルギーの方が後半に流すようになった。この日も、前半のベルギーはロメル・ルカク、エデン・アザール、ドリース・メルテンスの強力3トップがオランダとの違いを作ったが、この3人が前半いっぱいで交代すると、後半の立ち上がりに押し込んだだけで、途中からはオランダに試合の流れを明け渡した。

 オランダサイドからすると、選手交代によって再びプレッシングするエネルギーを得たとも言える。61分にファン・パトリック・アーンホルト(左サイドの多機能型、クリスタルパレス)、トニー・ヴィリェナ(MF、フェイエノールト)、73分にルーク・デ・ヨング、スティーヴン・ベルフワイン(ともにFW、PSV)といった何かしらフィジカルに特徴のある選手がピッチに入ると、オランダのアグレッシブさが増し、ベルギー守備陣の手を焼かせたのだった。

 9月のペルー戦も、オランダは選手交代を重ねるごとに強くなっていった。そして2−1で逆転勝利を果たした。ベストメンバーの「11人対11人」なら、オランダよりもペルー、ベルギーの方が強いかもしれない。これが公式戦ルールの「14人対14人」なら、まだペルーとベルギーに分があるだろう。だが、親善試合ルールの「17人対17人」なら、オランダは相手を上回ることもできる。オランダの選手層は意外と厚いのだ。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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