オランダが誇るキックの名手が代表引退 スナイデルとのお別れは「おでこ」で

中田徹

世界屈指のプレースキッカーが代表ラストマッチ

今もカタールのアル・ガラファでプレーするスナイデルだが、代表キャリアには終止符 【Getty Images】

 ヨハン・クライフ・アレーナで9月6日(現地時間)に行われたオランダ対ペルーの親善試合は、ウェスリー・スナイデルの代表引退試合を兼ねて行われた。オランダ代表史上最多となる134回目のキャップとなったスナイデルに対し、ロナルド・クーマン監督は先発という栄誉を与え、小柄な10番はキャプテンマークを巻いてピッチに飛び出していった。

 前半のオランダは立ち上がりの悪さ(これは代表チームのみならず、クラブチームも含めた近年のオランダの弱点だ)をペルーに突かれ、13分にDFダレイ・ブリントのミスも絡んで、ペドロ・アキーノに先制弾を決められた。

 ワールドカップ(W杯)ロシア大会ではグループリーグ突破こそならなかったものの好チームであるペルーに、前半のオランダは圧倒されてしまった。スナイデルにとっては気の毒なことに、前半終わりの笛が鳴ると、観客席からブーイングが浴びせられた。

 後半もキックオフからペルーに怒涛(どとう)の攻めを許したオランダだったが、この時間帯をなんとか持ちこたえると試合の流れはようやく変わり、スナイデルのスルーパスもさえるようになっていく。54分には、中盤でこぼれ球を拾ったスナイデルが、間髪入れずダイレクトでスルーパスを蹴り込み、これを受けたルート・フォルマーは完全にフリーになった。首を振りながらドリブルし、完全に自分がフリーなのを確認したフォルマーだったが、力んでしまいシュートをふかしてしまった。

「スナイデルよ、ありがとう」

奇しくもプロデビュー時の監督だったクーマンが、代表で最後のボスに 【Getty Images】

 スナイデルの出場時間は60分ほどと予想されていた。58分48秒、「ウェスリー! ウェスリー!」という合唱がスタジアム内に響き渡った。そんな中、オランダは60分にメンフィス・デパイが同点ゴールを決めた。その直後、スナイデルはお役御免となり、代わりにクインシー・プロメスがピッチに入った。

 アヤックス時代にスナイデルをトップチームでデビューさせたのはクーマン。その指揮官とガッチリ握手を交わし、スナイデルはベンチに退いた。

「ウェスリー・べタンクト! ウェスリー・べタンクト! ウェスリー、ウェスリー、ウェスリー、ベタンクト!」

 ウェスリー・スナイデルよ、ありがとう――という大合唱が始まった。スタジアムは完全にお祭りムードとなり、83分にはまたしてもデパイがゴールを決めて、オランダは2−1という勝利とともに、スナイデルを送り出すことができた。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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