アヤックス、PSVがCLで奮闘する影で 深刻な“2強以外”の弱体化
CLの舞台で得る経験値は「リーグ戦10試合分」
ベンフィカに勝利したアヤックスはグループリーグ突破が見えてきた 【写真:ロイター/アフロ】
CL→代表マッチウイーク→CL→代表マッチウイーク→CL……と、今、オランダサッカー界は良いサイクルで回っている。オランダ代表は、ネーションズリーグでドイツを3−0という大差で破り、世界を驚かせた。続くベルギー代表との親善試合も1−1で引き分けた。
結果はともかく、フットボールの質、選手のレベルという点では、オランダよりドイツ、ベルギーの方が上と見るのが妥当だろう。11月のゲルゼンキルヒェンでのリターンマッチでは、ドイツが意地をかけて大量得点を奪いにオランダに襲いかかってくるだろう。肝心なのは、オランダ代表がそういう真剣勝負の場をどんどん戦い、あわよくば勝つことによって成功体験とし、チームと個人のレベルアップにつなげていくことである。
グループBは、バルセロナとインテルが先行している、10月24日(現地時間)にPSVとトッテナムの両チームが対戦した時点では、共に勝ち点ゼロだった。
トッテナムはまだベスト16入りを諦めていなかったが、PSVにとっては3位でのヨーロッパリーグ(EL)進出さえ難しいグループだ。同じ勝ち点なら、当該者の対戦成績で順位が決まるUEFAルールにおいて、PSV対トッテナムはEL行きをかけた決勝戦だった。
グループEは、バイエルン・ミュンヘンの敗退は考えにくいところ。AEKアテネは少しレベルが劣るから、2位はアヤックスとベンフィカが争うことになる。23日のアヤックス対ベンフィカは、決勝トーナメント進出の行方を左右する大一番だった。
この緊迫した試合で、アヤックスは最後のワンプレーでMFノウセア・マズラウイが決勝ゴールを奪って1−0と競り勝ち、PSVは87分にセットプレーからFWルーク・デ・ヨングがシュートを決めて2−2の引き分けに持ち込んだ。私は前回のオランダ代表コラムで、「オランダには『最後に勝つのはオランダ』というウイナーズ・メンタリティーが宿ってきた」と記したが、クラブシーンでも似た傾向が現れている。
ベンフィカもトッテナムも、それはもう素晴らしいチームだった。こんなハイレベルなチームを現地観戦できるのは、この上ない幸せというものだろう。
アヤックスはベンフィカのプレスをかいくぐり、定石通りに相手の守備が薄い逆サイドにボールを散らし、1対1の状況を作ろうとした。しかし、ベンフィカの赤い集団は、まるで魚群のように息をそろえて陣形をスライドさせ、アヤックスにやすやすとチャンスを作らせなかった。
また、ベンフィカの個の守備も強かった。アヤックスがボールを奪って「守」から「攻」に切り替わった瞬間、すかさずベンフィカの選手がアプローチし、アヤックスのボールを刈り取って、前掛かりのアヤックスを慌てさせた。
一般的に、敵味方をボールが行き来する試合はレベルが低いものだが、アヤックスとベンフィカのテクニックとインテンシティーの詰まったデュエルは、実にハイレベルだった。
今回のアヤックス対ベンフィカを決勝戦の第1レグとみなすなら、ホームチームのアヤックスにとって0−0の結果は上々だったはず。それでも、アヤックスは勝利にこだわり、途中出場のFWデイビット・ネレスのクロスから右サイドバック(SB)のマルザウイが決勝ゴールを奪った。