０７年のＵ２１欧州選手権でオランダが優勝した時の主力、バベルはもう３１歳だ。当時の盟友であるＭＦヘドウィゲス・マドゥロは昨季いっぱいで引退したのだ。そんな彼が今、リバイバルを果たしていることに驚きを感じ、尊敬の念を抱いてしまう。
　
　３トップとＭＦワイナルドゥム、右サイドバック（ＳＢ）デンゼル・ダンフリース（ＰＳＶ）が生み出すエネルギー。ＣＢマタイス・デ・リフト（アヤックス）とヴィルギル・ファン・ダイク（リバプール）の高さと強さ。その中に左ＳＢダレイ・ブリント（アヤックス）とＭＦマルテン・デ・ローン（アタランタ）という冷静沈着ないぶし銀がいる。こうした個性をフレンキー・デ・ヨングがコーディネートする。年齢構成をみても、若手・中堅・ベテランが各ラインにそろっている。

　フランス戦のオランダはキックオフからわずか１分半で最初のビッグチャンスを作った。そして前半終了間際にバベルのシュートのこぼれ球をワイナルドゥムが蹴り込んで１−０とし、試合終了間際にはフランスのセットプレーのチャンスをしのいで電光石火のカウンターをさく裂させてから、勝利を意識した時間稼ぎのプレー。さらに、フレンキー・デ・ヨングがＰＫを誘って、デパイがパネンカ（チップキックのＰＫ）を決めて２−０で勝ちきった。オランダが完全に１つのチームになった。

「最下位間違いなし」の下馬評をオランダは見事に覆し、ネーションズリーグ・グループＡの２位以上を確定させた。Ｗ杯ロシア大会の覇者であり、苦手としていた国であるフランスを圧倒して勝ち、ドイツを降格に追いやったのだ。

　しかし、大事なのは２０２０ユーロの予選に勝つこと。オランダは今回のネーションズリーグで好成績を残していることから、ユーロ予選の抽選会でシード権を得た。クーマン監督が何よりも欲していたのは、このシード権だった。

　ネーションズリーグで土台を築き、ユーロの予選を勝ち抜き、本大会で世界を驚かせる――。クーマン監督の描くシナリオの第１章が今、著された。