未来の日本代表が「国内留学」で進化 早稲田大ラグビー部の新たな試み
CTB中野とSH齋藤の活躍で筑波大に快勝
身長186cm、体重96kgの体格でスピードもあるCTB中野将伍 【斉藤健仁】
9月9日、関東大学ラグビー対抗戦が開幕。創部100周年を迎えて、8年ぶりの対抗戦優勝、そして10年ぶりの大学王者を目指す早稲田大が、いきなり、難敵・筑波大と激突した。
早稲田大は夏合宿中の練習試合で大学選手権10連覇を狙う王者・帝京大に8年ぶりに28対14で勝利、一方の筑波大は6月の定期戦で関西王者の天理大を42対33で下していた。5月の春季大会の同カードでは筑波大が38対21で勝利していたこともあり、今季を占う試合の一つになると耳目を集めた。
結果、「原点回帰」をテーマにした「アカクロ」の新ジャージーをまとった早稲田大が「春からこだわってきた」という前に出るディフェンスから勢いに乗って、8トライを重ねて55対10で快勝。早稲田大学が筑波大から50点以上を挙げたのは9年ぶりのことで、思わぬ快勝に選手やコーチからは笑みがこぼれた。
もちろん、接点でのFW陣の奮闘も目立ったが、1年生からレギュラーを張るBKの中軸2人、SH齋藤直人とCTB中野将伍(ともに3年)が圧巻のプレーを見せた。齋藤は長短のパスで試合のリズムを作りつつキッカーとしても9本中7本を成功させて、中野も縦突破からのトライアシストや自らの2トライで勝利の立役者となった。
4月から7月中旬まではサントリーで練習
サントリーでの練習を経験して成長した齋藤直人(左)と中野将伍(中) 【斉藤健仁】
U20日本代表を率いた経験もあるサントリーの沢木敬介監督は2人を受け入れた経緯を「(大学生王者とトップリーグ優勝チームが対戦する)日本選手権もなくなっているし、有能な(大学生の)選手に高いレベルでプレーする機会を与えるべき。2人は将来、間違いなく日本を代表する選手になるので、海外留学にいくよう感じで、『サントリー留学』したというわけです」と説明した。
「青田買いでは?」という批判も出てきそうだが、今年から早稲田大を率いている相良南海夫(さがら・なみお)監督は「あくまでもチームのためにやらせていること。海外留学するくらいなら、トップリーグチームにいった方が大学にも通えるし、食事もしっかり摂れるし、代表選手もいる。企業チームに迷惑にならないのであれば、こっちからお願いしたい」と言い、沢木監督も「リクルートのためにやっているわけではないが、トップリーグのチームにはアカデミーもない。絶対に(選手にとっては)いいと思います」と語気を強めた。
齋藤直人「視野も広くなって余裕ができた」
2019年ワールドカップに向けた日本代表候補に入っているSH齋藤直人 【斉藤健仁】
3カ月強におよぶサントリーでの練習を通して、中野は「沢木監督にはまだまだ足りないところを指摘されましたし、同じポジションの梶村(祐介)選手、オーストラリア代表のマット・ギタウ選手もいたので、いい刺激を受けました」、齋藤は「SHとして首を振る(周囲を見て確認する)ことを何度も沢木監督から言われましたし、ほかの選手から学ぶこともありました。視野も広くなって余裕ができて冷静にプレーできるようになりました」という。
夏合宿の大東文化大戦から本格的に齋藤は試合に出たが、中野はケガの影響で最終戦の東海大戦のみの出場だった。そのため、2人がそろって先発したのが、この対抗戦の開幕戦だった。