“カオス”を生み出すラグビー日本代表 世界選抜戦は「ポジティブ」な惜敗

斉藤健仁

後半の3連続トライで3点差に迫る

DF2人の間を突き破ってトライを挙げた日本代表WTB福岡 【斉藤健仁】

 日本代表は21分、花園に強く「チャンスがあればトライを狙いたい」と意気込んでいたウイング(WTB)福岡堅樹が個人技でトライを挙げたが、世界選抜にさらに2トライを与えて7対24で前半を折り返した。後半開始早々、SO田村がキックオフを蹴った直後、ナンバーエイト(No.8)ツイ ヘンドリックと交錯するミスもあり、ギャップができたところを狙われてトライを許し7対31と24点差と大きくリードされる。この「ソフトトライ」が試合の中では大きかった。

 だが、ここから、日本代表が合宿の成果を発揮する。相手に疲れが出てきたことやメンバー交代したことで攻勢に出る。24点差でもアタッキングマインドを持って攻めたチームに対してジョセフHCは「ハードワークという点では感心している。1年以上前だと24点と大差がつけられたところで、自分たちからタオルを投げ込んでいた。けれど、このチームは勝つためのメンタリティーを理解し始めた」と一定の評価を与えた。

 後半6分、リーダーのひとりであるセンター(CTB)ラファエレ ティモシーが自陣奧深くから、相手のパスをインターセプトして独走トライ。ディフェンスで前に出続けていたことが功を奏した。その後は「相手が疲れてきてスペースがあった」とフィールド全体が見えているSH田中が入ると、アタックのリズムが変わり、20分、ボールを継続してWTBレメキ ロマノ ラヴァが右隅にトライ。さらに34分には、途中出場のSO松田力也のグラバーキックを、同じくリザーブから出たCTB中村亮土が押さえて28対31とした。

ジョセフHC「やってきたことが機能し始めている」

ゴール前で痛恨のノックオンをした日本代表CTB中村。世界選抜・ブリッツの巧みなタックルが光った 【斉藤健仁】

 CTB中村のゴール前でのノックオンや、最後のNo.8ツイのノックオンなどもったいないプレーもあった。また後半はニュージーランド代表キャップ71の左PRワイアット・クロケットが入ると、スクラムで劣勢になってしまったことも響いた。「スクラムでは1番に回られた。それで崩された。対応できなかった」(ジョセフHC)

 3度目の世界選抜戦は3点差の惜敗だった。ただ個々のタックルミスなど課題も多かったとはいえ、全体の戦い方は狙い通りだったと言えよう。試合後、ジョセフHCは「10点中6点」と評し、「ジャパンはしっかりしたアティテュード(戦う姿勢)と意気込みで戦えていた。試合に対するマインドセット(心構え)も正確なものだった。早い球出しがBKにチャンスを与える。結果的には負けたが、やってきたことが機能し始めている試合だった」と胸を張った

 またキャプテンのフランカー(FL)リーチ マイケルも「今日の試合についてはポジティブにとらえている。試合を通して良いアタックはできている。ディシプリン(規律)とセットプレー。この2つがうまくいけばもっと良い結果になっていた」と前を向いた。

“世界最強”オールブラックスに挑む

日本代表CTBラファエレは攻守に奮闘した 【築田純】

 いよいよ日本代表は11月3日、来年のワールドカップの開幕戦の地である東京・味の素スタジアムで5年ぶりにオールブラックス戦を迎える。相手は若手中心と予想されているが、ワールドカップ出場を目指し、黒衣軍団のプライドをかけて試合序盤からフルスロットルで向かってくることは明白だ。

 ディフェンス面では接点でしっかりファイトして、前に出てプレッシャーをかけ続けて、なるべく失点を抑えて勝つ流れに持っていきたい。「ワクワクしています」というジョセフHCは「キーポイントはスクラム、ラインアウトで自分たちのボールを確保すること。(セットプレーで)マイボールさえ取れれば(アタックで)プレッシャーをかけられる」と意気込んだ。

 世界選抜戦で攻守ともに良い学びを得た桜の戦士たちが、その教訓を糧に世界王者に挑む。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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