錦織“ポジショニングの変化”で劣勢打開 浅越しのぶの全米オープンテニス解説

構成:スポーツナビ
 テニスの四大大会最終戦「全米オープン」第10日が5日(日本時間6日)、米国のビリー・ジーン・キング・ナショナル・テニスセンターで行われた。男子シングルス準々決勝に出場した世界ランク19位の錦織圭(日清食品)は、世界ランク7位のマリン・チリッチ(クロアチア)にセットカウント3−2(2−6、6−4、7−6、4−6、6−4)のフルセットで勝利し、2年ぶりに全米ベスト4に進出した。

 スポーツナビでは、04年全米オープン女子シングルスでベスト8に進出した、元プロテニスプレーヤーの浅越しのぶさんに試合を解説してもらった。

出だしは相手ペース チリッチがとった錦織対策とは

チリッチとの激闘を制し、錦織圭が2年ぶりの全米ベスト4に進出 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 第1セットの出だしは、チリッチ選手のショットがすごく良くてびっくりするスタートでした。錦織選手のプレーが良い悪いではなくて、チリッチ選手がすごく良かったので、このままいったらどうにも手が付けられないなと思いました。
 チリッチ選手は、(ラリーの中で)バックのダウンザラインを出すタイミングがすごく早かったのですが、それは錦織選手の得意なバックのダウンザラインを警戒して、自分が先に打っていたのではないかなと感じました。ラリーを長く続けてから打つのではなくて、2、3回ラリーをしたらすぐにダウンザラインを打っていましたので、“錦織対策”をしていたのかもしれません。それが最初はハマっていたので、良い感覚でチリッチ選手はポイントを重ねていたのではないでしょうか。
 今日はサービスが鍵になると思っていたのですが、第1セットの錦織選手はセカンドサービスを(リターンで)打ちこまれていたので、この試合は厳しい展開になるかなと思っていました。
 ただ錦織選手も(構えやプレーする位置を)後ろに引いていたわけではありませんでした。「攻撃的に行こう」という意図が見えましたし、動き自体は悪くなかったですね。

“ポジショニング”を変え、プレッシャーをかけた錦織

 第2セットから第3セットにかけては、錦織選手がフットワークでコートを広く使っていました。最初はベースラインから少し下がった位置でプレーしていましたが、途中から下がったり前に詰めたりと位置を変えて、前後の動きをプレーに入れていました。早いタイミングでパンパンパンと打ち合うだけではなくて、後ろからストロークを始めて、チャンスがあったらベースライン近辺にいくというような、(距離の)長い球足のラリー展開でチリッチ選手のミスがだんだん多くなった印象です。その辺は試合をしながら「これは下がった方がいいんじゃないかな」と錦織選手が瞬時に判断したのだと思います。
 チリッチ選手からすると、相手に後ろに下がられるとコートがすごく広く見える。最初は集中力を持ってプレーしていたチリッチ選手でしたが、徐々にミスも生じていました。

(サービスリターンの立ち位置も)ビッグサーバーと対戦するときは、下がってみたり、前に詰めたりいろいろな位置に立ちます。それを相手に見せることによって、相手の気持ちが動揺するところもあります。それに、すごく速いサーブでも、後ろに下がった位置で打てば、バウンドして少し球速が下がるということもあります。錦織選手はかなり大きく位置を変えていましたが、今回の試合ではそれがすごく効いていました。
 ただ通常のプレーでは、今回の錦織選手ほど立ち位置を大きくは変えません。球速はバウンドすれば遅くなるとは言え、あまり下がった位置からリターンするのは、走る距離も長くなりますし返球が難しい。技術があるからこそできる作戦であり、プレーです。思い切り変えるという勇気もすごいですし、すごく考えられたポジションだなと思いました。
 
(錦織選手のポジショニング変更で、チリッチ選手にダブルフォルトが増えた?)時に前に詰めて、ボールの上がりどころを叩くというリターンもあるし、時には後ろに下がってよく相手のボールを見てしっかりと打つリターンもある。そのギャップがチリッチ選手にとっては嫌な感じがしたのではないかなと思いました。

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