これが実力差、錦織が省エネテニスで勝利 浅越しのぶの全米オープンテニス解説

構成:スポーツナビ
 テニスの四大大会最終戦「全米オープン」第8日が3日(日本時間4日)、米国のビリー・ジーン・キング・ナショナル・テニスセンターで行われた。男子シングルス4回戦に出場した世界ランク19位の錦織圭(日清食品)は、世界ランク34位のフィリップ・コールシュライバー(ドイツ)にセットカウント3−0(6−3、6−2、7−5)で勝利し、ベスト8に進出した。
 第1セット序盤はブレークし合う展開となるも、錦織のリードで第3セットへ。錦織は、調子が徐々に上がってきた相手に第10ゲームをブレークされたが、すぐにブレークバック。次のサービスゲームをキープして、ストレート勝ちをおさめた。
 スポーツナビでは、04年全米オープン女子シングルスでベスト8に進出した、元プロテニスプレーヤーの浅越しのぶさんに試合を解説してもらった。

無理のない“省エネテニス”で勝利した錦織

ストレートで勝利し、全米ベスト8入りを決めた錦織。暑い日中のタフマッチを制した 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 2人の力の差があった対戦だったのではないかなと、私は感じました。相手のコールシュライバー選手は、3回戦でアレキサンダー・ズベレフ(ドイツ、世界ランク4位)に勝ちました。順当にいけばズベレフが勝ち上がったと思いますが、その試合はズベレフの調子が悪かったように見えましたね。
 コールシュライバー選手は、試合の立ち上がりではどちらかと言うと、「錦織選手のスピードについていけるかな」と思いながらプレーしているような雰囲気が出ていました。錦織選手がしっかりと構えて打ったボールに反応できないようなシーンが、序盤のゲームで2ポイント分くらいありましたね。それで今日は力の差があるのではないかと感じました。

 錦織選手サイドから言えば“省エネテニス”でプレーしていた印象です。コートの中にキュキュキュッと入って、高い打点で打つといった、相手を動かすようないつものショットは無理に出していなかったので、そこまでしなくても勝てる相手だったのかなというのは感じました。得意プレーを出すまでもなく、打ち合いの中で相手がミスをしていましたから。錦織選手は攻撃に行こうと思えば行けた場面もあったと思いますが、コートも暑かったと思いますし、無理はせずにプレーした印象ですね。本来の錦織選手のテニスはすごくフィジカルが重要なのですが、そこまでたくさん動かなくても、ポイントを積み重ねていけた部分はあったと思います。
 それは本当の実力だと思うんです。上位の選手が下位の選手と対戦するときの、安定した戦いで勝っていくようなテニスをしていた。今日は自分のプレーを積極的に頑張るという方向性ではなく、相手の様子がよく見えていたので、そういう力を温存するようなプレーに切り替えたのではないかと感じました。

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