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ジョコに敗れた錦織が打ち明けた心の内
必ず見つける、攻略のための“何か”

ジョコビッチと芝で初対戦「最も崩すのが難しい選手」

準々決勝でジョコビッチに14敗目を喫した錦織。ベスト4進出はならなかった
準々決勝でジョコビッチに14敗目を喫した錦織。ベスト4進出はならなかった【写真:ロイター/アフロ】

 16回目にして初めて迎える芝のコートでの対戦を、錦織圭(日清食品)は「新しい戦い」だと戦前に表現した。

 12連敗中(不戦敗除く)の相手ではあるものの、2カ月前のローマ・マスターズ(BNLイタリア国際)では第1セットを奪い、勝機をつかむところまで迫った。

 錦織はノバク・ジョコビッチ(セルビア)を、常々「最も崩すのが難しい選手」だと称している。彼と対戦する時には「攻めるべきか、じっくりいくべきか」の迷いに襲われ、その“命題への解”はいまだ出ていない。


 その意味では、ウィンブルドン準々決勝という今回の戦いの舞台は、攻撃の優位性が高い芝ということもあり、攻める姿勢に迷いはさほどなかったろう。それでもやはり錦織を戸惑わせたのは、芝の上でも予想以上に高いジョコビッチの守備力だ。


「ラリーが長くなることは想定していたが、思ったよりディフェンスが良く、深いボールが返ってきた。攻めきれなかったのが……正直難しかったです」


 第2セット、そして第3セット序盤にかけては錦織優勢の時間が続いたが、その中でも、予想より2球、3球と多く返ってくるボールが、錦織の精神に圧力をかけ心のスタミナを奪っていく。

「本当にフリーポイント(エースや、相手のミスなどで楽に得られるポイント)をなかなかくれない選手ですし、精神力もかなり使うので……」


 並走状態に見える攻防の中で蓄積した心身のダメージは、やがては堤防が決壊するように一つの亀裂を機に顕在化する。3連続ブレークポイントの機を逃し、その直後のゲームをブレークされた、第3セットの第5から第6ゲームにかけての攻防は、その分水嶺(れい)だった。


「最後まで、ずっとチャンスは来ると思ってやっていましたし、3セット目も先にブレークチャンスがきた。取り切れなかったけれど、そこを取れれば、また自信が出てきてプレーも変わっていたかもしれない」

自分との戦い……錦織が打ち明ける“泡立つ心の内”

喜び、怒り……自らを鼓舞するかのように、感情をあらわにするジョコビッチ
喜び、怒り……自らを鼓舞するかのように、感情をあらわにするジョコビッチ【写真:ロイター/アフロ】

 自らそう振り返るターニングポイントで、最終的に勝利への道を進めなかったその理由を、錦織は「やっぱり何かが足らないんだろう」と言った。


 その「何か」とは、何か……?


 実は試合後の錦織は、解決への糸口を示すかのような、興味深い言葉を残している。

 それは、この試合でのジョコビッチが、時に過剰だと思えるまでに派手なジェスチャーや、感情的な姿を見せることについてのぜひを問われた際の、次の返答。


「普段の彼は、冷静にプレーする選手だと思う。でも特にケガから復帰した後は、以前よりも自分を鼓舞する必要がある」


 この言葉は恐らくは、今年1月末に手首のケガから復帰してきた錦織が、自分自身に言い聞かせてきたことではないだろうか? 今大会での彼は「復帰してきてからは特に思うようにプレーできなかったり、『復帰前だったらこういうプレーができていたのに』と、けっこうネガティブな考えになることも最近は多い。正直楽しくない時もあるし、難しい時もある」と、泡立つ心の内を認めている。そのような「自分との戦い」の中で彼が心掛けてきたのは、「冷静になること」と「アップダウンをなくすこと」だとも言った。

内田暁
テニス雑誌『スマッシュ』などのメディアに執筆するフリーライター。2006年頃からグランドスラム等の主要大会の取材を始め、08年デルレイビーチ国際選手権での錦織圭ツアー初優勝にも立ち合う。近著に、錦織圭の幼少期からの足跡を綴ったノンフィクション『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)や、アスリートの肉体及び精神の動きを神経科学(脳科学)の知見から解説する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。京都在住。

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