これが実力差、錦織が省エネテニスで勝利 浅越しのぶの全米オープンテニス解説

構成:スポーツナビ

“締めるところは締める”さすがの戦いぶり

暑さの中で“省エネテニス”をしながらも、締めるところは締めて勝ち切った 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 良かったところで言えば、今日は(得意の)バックハンドというよりも、フォアのショートアングル(短く角度のあるショット)や、クロスの短いショットを出していて、それはさすがだなと思いました。
 ただ4回戦ですので、プレッシャーも緊張もあったと思います。最初は体の動きも硬いようには見えました。それでも負けそうだなという雰囲気はみじんも感じませんでしたし、実力の差がかなりあったのではないかなと思いました。

(第3セットの後半は、相手もペースをつかんできたが?)そうですね。でも、見応えがあったのはそこだけでした。ゲームカウント5−4で迎えた第10ゲームをブレークされた場面では、コールシュライバー選手に開き直ったようないいショットがありました。でもそこで錦織選手は、次の相手のサービスゲームをしっかりとブレークできた。締めるところはきっちりと締めるというのはさすがです。あの場面でブレークバックして、最終的に3セットで試合を終えられたのは、本当に次につながる試合だったのではないかなと思います。あそこでずるずるとサービスを取られてシーソーゲームになってしまうと、体力も使いますから。

今日の条件の中では最高のプレー

(今日の体調面の様子はどう見えた?)かなりキツそうには見えました。この試合は今大会で初めて、日中の試合でしたし、いつも米国で練習しているとは言え、ニューヨークの暑さとはまた違うと思うので、体力面は一番の課題だと思います。体力がなくなってくると集中力がなくなってきますから。そこはしっかりと休んでリカバリーして、次に備える。チームでなんとかしていると思うので、そこは一番の重要なポイントだと思います。

 今大会の錦織選手は、体の動きもテニス自体もすごく良いです。今日の試合内容はそこまで良かったとは言い切れないですが“この対戦相手で、4回戦で、この暑さで”という条件の中では、最高の、良い勝ち方をしたのではないかなと思います。
(今後を見据えて力を温存できた?)本当に“体力温存テニス”をしているのではないかなと見えました。

「錦織圭の真価」が問われる準々決勝

準々決勝のチリッチ戦は、サービスゲームのキープがいつも以上に重要になる 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 次からが勝負です。準々決勝の相手はマリン・チリッチ(クロアチア)ですが、その辺からは本当の勝負になってくるのではないかなと思います。今回の相手は少し実力に差があったので、こういうテニスで勝てたけど、次にこのテニスだと勝てないぞという感じですね。本人ももちろん分かっていると思います。

 チリッチ戦は、本当に「錦織圭の真価」が問われる試合になると思います。チリッチもサービスプレーヤーですから、錦織選手もサービスキープが絶対で、キープを続けていかないといけない。自分のサービスゲームをブレークされた時点で危なくなってきます。錦織選手も、ここを目指してサービスを改良してきたと思うので、チリッチのようなビッグサーバーがきたときにはサービスゲームが鍵になりますね。

浅越しのぶ(あさごえ・しのぶ)プロフィール

1976年兵庫県生まれ。小学校4年生から軟式テニスを始め、園田学園中学校への入学をきっかけに硬式テニスを始めた。97年にプロ転向。2004年、カナディアン・オープンで杉山愛とのペアでダブルス優勝。同年のアテネ五輪はダブルスベスト4、全米オープンテニスではベスト8に入り大活躍した。06年に現役引退。翌年結婚し、11年に長女を、14年に長男を出産。現役時代の自己最高ランキングはシングルス21位、ダブルス13位。WTAツアーで3度のシングルス準優勝、ダブルスで8勝を挙げた。日本オリンピアンズ協会会員(2009年〜10年代議員を務めた)

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