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変わりゆくバルサのフットボールスタイル
疑問を投げかけるカンテラーノの台頭

変化が見られる下部組織のあり方

ICCではカンテラーノのプイグの活躍が話題になった
ICCではカンテラーノのプイグの活躍が話題になった【Getty Images】

 米国で現地時間5日に行われたインターナショナル・チャンピオンズ・カップ(ICC)のミラン戦にて、バルセロナのカンテラーノ(下部組織出身の選手)、リカルド・プイグが素晴らしいパフォーマンスを披露したことが話題になっている。敵将のジェンナーロ・ガットゥーゾ監督に「真のスペクタクルだ」と言わしめた18歳の台頭は、7月に長年ラ・マシア(下部組織)のプレーモデル構築に貢献してきたジョアン・ビラとの契約を更新しなかったクラブの方針とは対照的な出来事だと言える。


 地元カタルーニャのメディアは早速プイグを「新たな至宝」ともてはやし、アンドレス・イニエスタの「正統なる後継者」とまで表現している。その傍ら、元ラ・マシアのコーディネーターでヴィッセル神戸の育成担当となったアルベルト・ベナイジェスは「ジョルディ・メストレ副会長が育成部門の責任者となった2010年にクラブは育成を放棄した」と現執行部の育成軽視を批判している。


 ジョゼップ・グアルディオラの信念を受け継いでいたティト・ビラノバが亡くなって以降、バルセロナのフットボールに対する考え方は、ラ・マシアのあり方を含めて少しずつ変わってきている。


 3トップのシステムは不動で、グラウンダーのショートパスを多用したポゼッションスタイルを遵守してきた以前とは異なり、近年は中盤の選手には球際の強さや幅広いエリアをカバーする機動力が重視されるようになった。それは過去半世紀において、最も輝かしい時代を築いた功労者たちの考え方に反するものだ。

グアルディオラ時代からの生き残りはわずか数人

グアルディオラ時代からの生き残りはメッシらわずか数人となった
グアルディオラ時代からの生き残りはメッシらわずか数人となった【写真:ロイター/アフロ】

 バルセロナに初めてポゼッションスタイルをもたらしたのは、1971年にクラブにやってきた指導者ラウレアーノ・ルイスだと言われている。リヌス・ミケルスが監督として、ヨハン・クライフが選手としてバルセロナに加入し、改革を起こす直前のことである。


 当時のバルセロナは長身でフィジカル能力の優れた選手を重視し、小柄で細身の選手にフットボールはプレーできないとまで考えられていた。だがコパ・カタルーニャでビールメーカーを親会社とするダムに敗れた後、当時の会長アグスティ・モンタルは「誰に負けることもあり得るが、ビール会社にだけは負けてはならない」としてクラブのフットボール理念を180度変えることを決断したという。


 モンタルの手でバルセロナにやってきたラウレアーノは、既存の概念を覆す戦いに身を投じることになった。彼は当時の状況を次のように振り返っている。


「誰もが私のやり方に悪い意味で驚いていたよ。当時は練習にボールを使わず、監督は選手たちを走らせてばかりで、長身で強靭(じん)な選手ばかりを重用していたからね」


 それから40年弱の歳月を経て、ラウレアーノの持ち込んだプレースタイルはグアルディオラの指揮下で黄金期を築くに至った。


 だがその中心を担っていたシャビ・エルナンデスとイニエスタを失った今、グアルディオラ時代からの生き残りはトップチーム在籍15シーズンを迎えたリオネル・メッシや、セルヒオ・ブスケッツ、ジェラール・ピケ、セルジ・ロベルトらわずか数人となってしまった。彼らにアルトゥーロ・ビダルのようなフィジカルに長けた新戦力を加えた今季も、ビラノバの退任を境に少しずつ進んできた変化を受け入れる他ないのかもしれない。

セルヒオ・レビンスキー/Sergio Levinsky
セルヒオ・レビンスキー/Sergio Levinsky
アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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