バルサが迎える味気ないシーズン終盤戦 国内2冠が目前でも立ち込める危機感

ラ・リーガ&国王杯の2冠でも失敗?

CL準々決勝、バルサは第1戦の3点リードを守りきれずローマ相手に敗退 【Getty Images】

 4月21日(現地時間、以下同)に行われるコパ・デル・レイ(国王杯)決勝でセビージャを破れば、バルセロナは数日内にラ・リーガとの2冠を獲得することになるはずだ。そうなれば5月6日のエル・クラシコに向け、スペインメディアはレアル・マドリーが王者を迎えるパシージョ(花道)を行うべきかどうかの議論をあおることだろう。

 だがチャンピオンズリーグ(CL)準々決勝で生じた予期せぬ敗退は、バルセロナの執行部が来季のチーム作りを行う上で、少なくない影響を及ぼすことになりそうだ。格下と見られていたローマを相手に、ファーストレグを4−1で制した後に喫したまさかの逆転負けは、それほどにショッキングな出来事だった。

 通常ならば、ラ・リーガと国王杯の2冠を手にしたシーズンに失敗の烙印(らくいん)を押すことなどできない。だが今季のバルセロナが、それ以上の成功を期待されていたことも事実である。

 バルセロナにとってCL優勝だけが唯一の成功条件というわけではない。CLはあらゆるクラブにとって、毎シーズンの優勝を義務付けられるようなコンペティションではないからだ。極めてハイレベルな競争を勝ち抜いてヨーロッパの頂点に立つまでには、運に左右される部分も大きい。パリ・サンジェルマンやマンチェスター・シティのように、スポンサーと偽り国家レベルの資金援助を受ける“ファイナンシャル・ドーピング”を行うクラブが台頭してきた近年は特にそうだ。

3年ぶりの3冠に向けて順調だったが……

今季限りで退団濃厚と言われるイニエスタに、バルサは3冠をプレゼントできず 【Getty Images】

 しかし、今季のバルセロナに寄せられる3冠獲得への期待は大きく膨らんでいた。そこには今季限りで退団する可能性が高いアンドレス・イニエスタに有終の美を飾ってもらいたいという関係者の気持ちも含まれている。シャビ・エルナンデスがビッグイヤーを掲げてバルセロナでのラストシーズンを終えた、2015年のようにである。

 実際、バルセロナはほんの少し前まで、3冠獲得に向けて順調に歩みを進めていた。ジョゼップ・グアルディオラとティト・ビラノバの時代のようにスペクタクルなプレーで見る者を魅了する試合は少なくなったが、今季のチームは手堅く、したたかに、そして今季も成熟したプレーでチームを動かして多くのゴールを生み出しているリオネル・メッシの突出した才能を最大限に生かすことで、勝利を重ねてきた。

 6月のワールドカップを最大の目標としているメッシとしては、バルセロナで勝ち取った3冠を手土産にロシア入りするのが理想だったはずだ。イニエスタの圧倒的な支配力、ルイス・スアレスの得点力、ジェラール・ピケの品格と経験、ジョルディ・アルバが加える縦のスピード、そしてマルク=アンドレ・テアシュテーゲンがもたらす安心感――そのためのサポート体制も万全だった。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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