変わりゆくバルサのフットボールスタイル 疑問を投げかけるカンテラーノの台頭

ラ・マシアのプレーモデルも変化

夏に加入したビダルはフィジカルに長けたタイプの選手 【写真:ロイター/アフロ】

 ラ・マシアにも同じことが言える。ベナイジェス、ビラら功労者が去ったことで、著名なジャーナリストであるマルティー・ペラルナウが「バルセロナのフットボールを成文化した大憲章のようなもの」と表現したプレーモデルを遵守する人間は、パコ・セイルーロ1人となってしまった。

 そのセイルーロは数年前にバルセロナBが3部降格の危機に陥った際、クラブが下した決断を強く批判したことがある。

「クラブはBチームを2部に残すためにエウセビオ・サクリスタンを解任したが、何の効果もなかった」

 彼の言葉通り、この年バルセロナBは史上初めてシーズン中の監督交代に踏み切ったかいもなく、3部に降格している。しかも当時のチームが多くのタレントを輩出することはなかった。

 パリ・サンジェルマンにネイマールを奪われたこともあるが、近年のバルセロナは選手の出入りが活発になっている。今夏もエルネスト・バルベルデ監督の要望によって続々と新戦力が加入しているものの、プイグの台頭は迷えるクラブに原点回帰を促すメッセージのように思えてならない。

バルセロナは今後どこへ向かっていくのか

ICCでプレーしたカンテラーノたちに今季はどれだけ出番があるのだろうか 【写真:ロイター/アフロ、USA TODAY Sports/アフロ】

 バルセロナの補強が間違っているとは言わない。イニエスタが去り、パウリーニョも中国リーグへ戻ってしまったが、ビダル、アルトゥール、マルコム、クレメント・ラングレらの加入はチームの選手層に厚みをもたらすはずだ。

 一方で、理解に苦しむ動きがあったことも確かだ。リュカ・ディーニュやアレイクス・ビダルの放出は自然な流れとして、ワールドカップ・ロシア大会で3試合に出場して3ゴールを挙げる大活躍を果たしたジェリー・ミナまで手放す必要はあっただろうか。さらに第2GKとして限られた出場機会に好パフォーマンスを発揮したヤスパー・シレッセンも、チームに残るかどうかはっきりしていない。

 はたしてバルセロナは今後どこへ向かっていくのか。それはビッグタイトルの獲得以上に重要なテーマである。31歳となったメッシはまだ何シーズンも戦うことができるだろうが、いつまでも彼のタレントに頼り続けることはできない。アルゼンチン代表はそのことをよく知っている。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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