東京五輪で特設コートを満員にしたい! ビーチバレー界が取り組む組織改革

市川忍

東京五輪の集客目標は1万2000人

ビーチバレー界は五輪会場に1万2000人を集客するという課題を突きつけられることになった(写真は2017年にオーストリア・ウィーンで行われた世界選手権) 【FIVB】

 2020年に開催される東京五輪において、お台場の潮風公園に新設されるビーチバレーボール会場の客席数は、レギュレーションで1万2000席以上と決められている。特設コートに1万2000人を集めるという目標は、現在のビーチバレーボール界にとっては極めて高いハードルだ。「ビーチの妖精」と呼ばれた浅尾美和が最も活躍していた06〜10年には、多いときには1大会の3日間で4000人に近い観客を集め、各大会約100社のメディアが取材に駆けつけていた。しかし浅尾が引退した12年以降は、そのどちらも急激に減って現在に至っている。

 五輪会場に1万2000人を集客するという大きな命題を突きつけられることになったビーチバレーボール界は、その現状をどう打開しようとしているのか。

ロンドンもリオも、ビーチバレーが最多動員だった

ビーチバレーは2大会連続で最多動員を記録している(写真はリオ大会) 【写真:ロイター/アフロ】

 公益財団法人日本バレーボール協会(JVA)ビーチバレーボール事業部の八田茂専務理事は「JVAカップ兼アジア競技大会日本代表チーム選考大会」記者会見の席でこう決意表明した。

「12年のロンドン五輪でも16年のリオデジャネイロ五輪でもすべての競技の中で観客動員が最も多かった競技はビーチバレーボールでした。20年、東京五輪の際には日本も観客を動員してくれと国際バレーボール連盟(FIVB)から強い要請がありました。どうやってビーチバレーを協会として盛り上げていくか。しっかりと運営費用をかけてやっていくつもりです」

 これまでJVAにおけるビーチバレーボール事業の位置づけは極めて低く、年間にかけられる予算も限られていた。今年度からビーチバレーボール事業部へと配置転換された八田専務理事は、まずは予算確保に尽力した。

 その上で真っ先に手を付けたのが「ビーチバレーボールの商品力を上げること」だった。プロモーション、マーケティング、イベント開催、広報の専門家をプロジェクトに招き入れ、ビーチバレーの認知度アップを目標に掲げたのである。

 プロジェクトチームのリーダーを務める船山浩平は語る。

「最初にお話をいただいたときに、『何としても20年に会場を満席にしなければいけない』という協会の気合いを感じました。同時に、これまで日本でビーチバレーボールに携わってきた誰もが思っている『ビーチバレーをメジャーな競技にしたい』という願いが、東京五輪開催という機会を得て、動き出したのではないかととらえています」

「まずメディアに来てもらおう」

イベント企画や運営を行ってきた船山は「まずメディアに来てもらうことを考えた」と話す 【JVA BEACHVOLLEBALL】

 船山はこれまで、さまざまなジャンルのアーティストのイベント企画や運営、進行などを専門に手掛けてきた。

「ずっとエンターテインメントの世界で、アーティストのプロモーション活動を手掛けてきて、SNSとメディアは両輪で、どちらもとても重要だと感じていました。特にメディアに取り上げていただくことは、認知を上げるために最も必要なことです」

 今年度のジャパンビーチバレーボールツアー(以下・ジャパンツアー)第1週の沖縄大会に足を運んだ船山は、あまりの注目度の低さに驚いたと振り返る。地元の新聞社、テレビ局を合わせ計6社しか集まらなかったのである。

「あの大会を見て、すぐに手を打たなければいけないと思い、半ば強引にやりました」と、「JVAカップ兼アジア競技大会・日本代表チーム選考大会」の記者会見を急きょ、池袋の商業施設で行うことを提案した。

「まずメディアに来てもらおう。どこで誰がどんな大会をやっているのか分かるようにしようと話しました。私が手掛けてきたアーティストの中には、全く無名の、ファンや音楽ジャンルを1から開拓しなければいけない人たちもいました。ビーチバレーもそれに近いと思います。中に入ってみてあらためて『とてつもないマイナー競技だ』と感じました」

 これまで選手個人の発信力に頼りきりだったSNSも、公式アカウントをリニューアルし、頻繁に更新することを決めた。同時にビーチバレーボールの特設Webサイトを整備し、SNSと連携させている。

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著者プロフィール

フリーランスライター/「Number」(文藝春秋)、「Sportiva」(集英社)などで執筆。プロ野球、男子バレーボールを中心に活動中。

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