越川優が行ったビーチ仕様への肉体改造 転向から3カ月、異例のスピードで順応中
ジャパンツアー・平塚大会でベスト4進出
インドアからビーチバレーに転向して3カ月、越川(左)が平塚大会でベスト4進出を果たした(写真は5月のもの) 【坂本清】
「すべてペアを組んだ長谷川君のおかげです。この大会からペアを組んで、約1週間しか練習をしていないので、今大会は『とにかく練習してきたことをすべて出そう』と思っていました。ゲーム中は長谷川君が指示を出してくれるので助かっています。でも、これからは助けてもらうだけではなくて、自分のプレーの質も上げていけるようにがんばります」
平塚大会の初日、対戦した庄司憲右(愛媛県競技力向上対策本部)は越川の印象をこう語る。
「さすが長年、日本代表としてプレーしてきただけあってスパイク、ブロック、レシーブ、サーブなどすべてのプレーのレベルが高い。特にスパイクはパワフルで、強打に苦戦しました。転向して3カ月ということを考えると、今後、もっとビーチに慣れてきたら手ごわい相手になることは間違いありません」
インドア時代から体重は6キロ増加
同時期にインドアから転向した石島(左)とともに、合宿でビーチバレーへの順応に取り組んだ 【坂本清】
合宿では越川と同様にインドアからの転向したばかりの石島雄介(トヨタ自動車)を含む3名と、テクニカルコーチ、フィジカルコーチとともにビーチバレー競技への順応を優先して練習メニューを組んだという。週5日のボール練習と、週6日の筋力トレーニングの成果もあり、体重はインドア時代に比べて6キロ増えた。
肉体改造を試みたのは、ビーチバレーという競技の特性を考慮した上での決断だ。砂の上で1セット21点、2セット先取のゲームを行うビーチバレーは、インドアと比較すると得点数もセット数も少ないが、使う筋肉、運動量が圧倒的に違う。
その上、ビーチバレーは初日にグループ戦で2試合を戦い、勝ち進めば翌日、続けて準決勝と決勝戦が行われる。ジャパンツアーは毎週末、日本各地で開催され、仮にすべての大会にエントリーすれば5カ月に及ぶ長丁場だ。平塚大会では、一日目の2戦を終えた直後、「しんどい」と本音をもらして苦笑した。インドア時代からトレーニングや食事には高い意識で取り組んできた越川ではあるが、ビーチでの連戦に耐えるためには、さらに強靭(きょうじん)な体を作らなければならない。
「それでも1試合目は日が陰っていたからまだ良かったんですけれどね。2試合目はきつかったですね」
容赦なく照り付ける日差しと、大量に流れる汗。バランスを取るのが難しい砂の上でのプレー。体力の消耗が激しいスポーツだということを再認識している最中だ。
ビーチ特有の“風”への対応
「1試合目、ジャンプサーブでいったんですけれど、自分の感覚ミスによる失敗が多かった。2試合目は1試合目より風が出てきたので、フローターに切り替えました。いい軌道で打てたし、相手も崩れてくれたので、そのままジャンプサーブなしで、フローターでいったのも良かったと思っています」
ジャンプとフローターのどちらのサーブでいくのか。風や、相手の力量、精神状態などを見て、ペアの長谷川とともに戦略を立てたと振り返る。V・プレミアリーグで3度タイトルを獲得し、越川の代名詞ともなってきたサーブだが、強力なジャンピングサーブより有効であると判断すれば、平塚大会のようにフローターを多用するケースも多い。
風は、その日の天候だけではなく、コートの形状によっても向きや強さが変わる。観客席がある会場であれば、スタンドで風がさえぎられる。スタンドのあるなしや、高さによっても変わってくる風を計算し、試合中に即座に対応することが求められる。