ベルギーでの成長を実感する森岡亮太 欧州で弱点を克服するまでの葛藤

中田徹

プレーオフで実現した日本人対決

ベルギーリーグ「プレーオフ1」で、森岡vs.久保の「日本人対決」が実現。試合は久保が所属するヘント(黄色)の勝利に終わった 【Getty Images】

 ベルギーリーグ・レギュラーシーズンの上位6チームで争われる「プレーオフ1」が開幕し、現地時間4月1日には森岡亮太の所属するアンデルレヒトと、久保裕也がプレーするヘントが対戦した。79分から出場した久保は、その7分後にPKキッカーを務め、一度はそのシュートを相手GKマッツ・セルスにストップされるも、リバウンドをしっかり蹴り込んだ。一方、森岡は58分にGKロブレ・カリニッチとの1対1のシュートを右ポストに当ててしまい、絶好の同点機を逸してしまった。

 試合は2−0でヘントの勝利に終わった。久保がピッチに入ってきた時、森岡は「あ、入ってきた。こいつにだけには、やらせない」と思ったという。しかし、ゴールを奪われてしまい、「やられましたけどね」と言って苦笑いした。

 ファーストプレーで森岡を背後からファウルする荒々しい試合の入りをした久保は「気持ちが空回りしただけです。たまたま近い位置に(森岡が)いたので『プレッシャーにいかないと』と思った。そんなに意識せずやったんですけれど、イエローもらっちゃいました」と振り返った。

 今季、9試合を残してヘントは2位、アンデルレヒトは3位。久保と森岡はチームの優勝や来季の欧州カップ戦(チャンピオンズリーグ・ヨーロッパリーグ)出場権獲得に尽力すると同時に、 日本代表へのサバイバルレースに挑むことになる。

欧州の玄関口となるポーランドリーグの現実

 今回の「日本人対決」には日本メディアから4名の記者が集まり、日本でも試合が中継された。しかし、森岡はかつてほとんど誰にも注目されなかった「日本人対決」をポーランドで経験している。

 2016年4月23日、シロンツク・ヴロツワフの一員として森岡は、加藤恒平(サガン鳥栖)のいたポドベスキジェ・ビェルスコ=ビャワと戦い、1ゴール1アシストという圧巻の活躍でチームを2−1の勝利に導いている。また、8月1日には北野晴矢が所属するポゴニ・シュチェチンと対戦し、2−0で完勝。森岡自身は1アシストを記録した。

「僕は、ポーランドで降格争いをしているようなチームから、ヨーロッパでスタートしました。ポーランドリーグには、皆さんがあまり知らないような若い選手がいるレベルのリーグです。高校の先輩(村山拓哉。元ポゴニ・シュチェチン)は自分と入れ替わりで違う国(タイ)に行きました。自分は、Jリーグのチームにも入れないような選手がいるリーグからスタートして、ここまできている」(ヘント戦後の森岡。以下、説明のないコメントは全て同試合のもの)

 ヴィッセル神戸在籍時には日本代表の一員としてプレーしたこともある森岡だったが、欧州クラブのスカウト網に引っかかることはなかった。以前、森岡はこう語ったことがある。

「日本代表に(定期的に)入っていなくて、Jリーグの中位クラブでプレーしていたらゼロ円移籍でもなかなかヨーロッパに行けない。練習参加とかで見てもらえれば、また話は違いますけれど」(昨年9月末、ベフェレン時代の森岡)

 無名の日本人プレーヤーにとって欧州の玄関口となるポーランドリーグに、16年から森岡も参戦することになったのだ。ポーランドの治安はかなりよく、生活そのものに問題はなかった。しかし、ことサッカーという点に限ると、ポーランドは辺境の地であった。

「行く前は『ポーランドはヨーロッパだからガンガン、スカウトが来るよ』みたいな話をしていたんです。けれど、実際にポーランドでプレーしたら全然オファーが来ない。それで話を聞いてみたら『やっぱりポーランドは(欧州のサッカー主要国から)遠いからね』だって。ポーランドが遠いんだったら、そりゃあ日本なんか(スカウトが)全然来ないわけです(苦笑)」(同、ベフェレン時代の森岡)

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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