森岡亮太に芽生えた常勝のメンタリティー 徐々に深まったチームメートとの相互理解
2人の退場者を出すも、2−1で勝利を収める
森岡は貴重なPKを獲得し、チームの勝利に貢献した(写真は2月4日のKVメヘレン戦のもの) 【Getty Images】
走り込んだ先で“1対1”の状況を作る。それがアンデルレヒトで得た、森岡亮太の新たなプレースタイルだ。後半31分、森岡が相手ペナルティーエリア内の右サイドを駆け抜けると、ケネット・サイーフから絶妙のワンツーが戻ってきた。デンジャラスゾーンに入り込んだ森岡を、たまらずアントワープのセバスティアン・シアニが倒してしまい、アンデルレヒトにシルベール・ガンボウラの決勝ゴールにつながる貴重なPKが与えられた。
PKのシーンを森岡が振り返る。
「あの時はケニー(ケネット・サイーフ)がいい形でワンツーして、いいボールを出してくれました。PKになりましたが、PKにならなくても、ほとんど決定機だったので。本当にいい形を作れたと思います」
その後、後半36分にはMFアドリアン・トレベルもレッドカードを受けてしまい、アンデルレヒトはとうとう9人に。それまで、しっかりボールをつなごうという意識を保っていたアンデルレヒトだったが、さすがに専守防衛に切り替え、後半38分に森岡はベンチに退いた。
試合後、監督は森岡を名指しで評価
アンデルレヒトには、「中盤のメトロノーム」と呼ばれるスベン・クムスと、「どのチームにも1人は欲しい」と言われるトレベルがいる。この2人に、クリエーティビティーのある森岡が絡んで中盤のリズムを作り、前線のテオドルチュクにボールを出し入れしながら、しっかりボールをつなぐ時間帯を作った。チャンスの数ではアントワープが上回ったかもしれない。それでも引かずにパスをつなぐことで「フットボールをする」という意思を示したことが、最後に勝利を呼び込んだ。
「1人減っても、五分ぐらいに戦えていた。むしろいい形を作っていました。そこで無理にガッツリブロックを組んでカウンターというよりは、(パスを)つないでつないで、というふうにできていた。それを最後までしっかりと貫けたことが、勝利の要因かなと思います」(森岡)
試合後のファンハーゼブルック監督は、テオドルチュクと森岡の名前を幾度も出して、2人のキープ力を褒めたたえた。
「ルーカス・テオドルチュク、そして森岡亮太。この2人がとても重要だった。彼らはチームが攻撃する機会を作ったり、落ち着きどころを作ったりした。本当によくやってくれた」(ファンハーゼブルック監督)
移籍当時はプレースタイルの違いに苦しんだが……
「“自由なところ(ベフェレン)”から、“形のあるところ(アンデルレヒト)”に来たので、最初はどうしていいのか分からなかった。落とし込まないといけないことが多く、しかも、落とし込むまでの時間がなかったので、最初は難しかったです」(森岡)
1カ月前は森岡個人のプレーも、チームとの連係もぎこちないものだった。しかし、「走り込んだ先で“1対1”の状況を作る」という個人戦術をファンハーゼブルック監督から授かってから、チームメートとの相互理解が深まっていった。今や、森岡はアンデルレヒトでの役割とプレーを「だいぶクリアになった。いや、ほとんどクリアしました」とまで言い切る。
「練習から(チームメートと)本当に合ってきているシーンが多い。お互いに形作りを共有できていると思う。お互いの関係性は、間違いなく良くなってきていると思います」(森岡)
ベルギーリーグのレギュラーシーズンが終了し、アンデルレヒトは首位のクラブ・ブルージュと勝ち点12差で2位に付けている。
ファンハーゼブルック監督は「優勝にはミラクルが必要」と言いながらも「勝ち点30のうち、25を奪うことのできるチームはないはず。うちにも無理だ」と各チームが勝ち点を取りこぼすことを予想し「希望はある」と優勝への望みは捨てていない。
森岡は指揮官より、ダイレクトに優勝への意気込みを語った。
「チームの雰囲気はもちろんいいですが、ちょっとブルージュと(勝ち点に)差があるので、またプレーオフに入って、この雰囲気を継続しつつやっていきたいです。(プレーオフに向けて個人的な目標は)何とかブルージュを抜いてやるということですね。そこに尽きます」
森岡にも、常勝チームのウイナーズ・メンタリティーが芽生えている。
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