G前強襲ステルヴィオ、打倒ダノン名乗り ルメール成長実感「2000mでも行ける」

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待望の重賞初勝利

ステルヴィオ(手前)がゴール前強襲の差しでスプリングSを勝利 【スポーツナビ】

 GI皐月賞への切符をかけたトライアルレース、第67回GIIスプリングステークスが18日、中山競馬場1800メートル芝で行われ、クリストフ・ルメール騎乗の1番人気ステルヴィオ(牡3=美浦・木村厩舎、父ロードカナロア)が優勝。中団待機からゴール前一気の末脚を繰り出し、打倒ダノンプレミアムへ名乗りを挙げた。良馬場の勝ちタイムは1分48秒1。

 ステルヴィオは今回の勝利でJRA通算5戦3勝、重賞は初勝利。騎乗したルメール、同馬を管理する木村哲也調教師ともにスプリングS初勝利となった。

 なお、ハナ差の2着には戸崎圭太騎乗の3番人気エポカドーロ(牡3=栗東・藤原英厩舎)、さらに3馬身半差の3着には柴田大知騎乗の6番人気マイネルファンロン(牡3=美浦・手塚厩舎)が入線。この上位3着馬までに皐月賞(4月15日、中山2000メートル)への優先出走権が与えられる。

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土壇場での逆転「負けたと思った」

際どい接戦に「負けたと思った」とルメール 【スポーツナビ】

 ダノンプレミアム不在のここは意地でも負けられなかったところだろう。GI朝日杯フューチュリティステークス2着馬の地力を見せた最後のひと伸び。「ゴール直後は負けたと思いました」とルメールが振り返るくらい、レースは2番手から抜け出した戸崎エポカドーロの押し切り態勢だったが、ステルヴィオは土壇場でひっくり返して見せたのだ。

「今回は休み明けでしたけど、重賞だから勝つのは大切。やっぱり最後はすごくいい脚を使うし、瞬発力が強い馬ですね」とルメール。

 前走まで重賞は未勝利ながら、GIとGIIIで2着が1回ずつ。その2レースで先着を許した相手がいずれも無敗の2歳王者ダノンプレミアムだった。クラシック本番での逆転へ勢いをつけるためにも、ここは休み明けのトライアルレースとはいえ、勝利は絶対条件。前日の阪神で行われた若葉ステークスで、もう1頭の2歳GI馬タイムフライヤーが5着に敗れてしまった今、もし、ここでステルヴィオも惨敗するようなことがあれば、もはや皐月賞の大勢は決した――そんなムードすら漂っていたはずだ。

 ただ、ダノンプレミアムの後塵を拝した2レース、GIIIサウジアラビアロイヤルカップが1馬身3/4差(0秒3差)、続くGI朝日杯FSがさらに差を広げられる3馬身半差(0秒6差)という結果を顧みれば、力差は依然としてある。ステルヴィオがスプリングSを勝ったからといって、一方でダノンプレミアムも余裕の走りでGII弥生賞を快勝していることを考えれば、2頭の力差が一気に縮まったとは考えづらい。

 しかしながら、ルメールから語られた言葉は“ひょっとすると”と思わせるに十分な明るい材料だらけなのだ。

「以前はスタートの後、馬体がちょっと緩いからいつも後ろのポジションになっていました。だから、最後の直線は良く伸びるけど、ちょっと遅い。でも、今年は良さそうですね。緩さがなくなってきているから、今日はいいポジションを取ることができたし、去年よりも良くなっています」

緩さ解消、距離延長も望むところだ

成長して迎える皐月賞、打倒ダノンプレミアムなるか 【スポーツナビ】

 確かに、パトロールビデオを見ると、スタート直後の一完歩目の踏ん張りがまだ少し足りなさそうだが、それでも出負けしなかったから今回は無理なく中団のポジションをキープできた。2歳時よりも1列、2列前で競馬を進めることができ、かつ、ルメールも絶賛する自慢の瞬発力がその位置から繰り出すことができれば、間違いなくダノンプレミアムとの差は縮まるだろう。

 加えて、距離に対してもルメールは問題ナシの太鼓判を押している。

「2000メートルでも大丈夫。もっと距離がほしいと去年も思っていたし、今日は1800メートルだったけど、決勝戦があと200メートル延びても行けると思いました」

 父はアジアを制した名スプリンター、ロードカナロア。そのため、距離延長に関してはディープインパクト産駒のライバルよりも不安視される向きがあるだろう。しかし、世界の名手がキッパリと否定したことで、不安はなくなった。中山2000メートル決戦でも存分にその力を発揮できるに違いない。

 好位から一歩先んじて抜け出すダノンプレミアム、それを猛然と追うステルヴィオ――そんなシーンが今からもう目に浮かぶ。もちろん、ワグネリアン、ジャンダルム、タイムフライヤーらが指をくわえて黙っているはずがないし、昨年のアルアインのように次週のGIII毎日杯からとんでもない新星が飛び出す可能性だってある。そう考えると、今年の皐月賞は“ダノンプレミアム1強”の下馬評だが、役者がそろっていることでむしろ“混戦”と見ることもできるか。トライアルシーズンもいよいよ終盤、競馬ファンにとっては議論が尽きない本番までの1カ月となりそうだ。

(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)
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