不器用な男、石川直宏が選んだ次の目的地 FC東京を「強く、愛されるチーム」に
人生の半分を費やした、長い現役生活を終える
昨季限りでピッチを去った石川直宏。人生の半分を費やした長い旅に終止符を打った 【スポーツナビ】
石川は昨年8月の現役引退発表会見以降、何度も同じ質問を受けてきた。
「引退後は何をする?」
「指導者の道に進む可能性は?」
すると、決まってこう答えた。
「本当に、まだ何も決めていないし、決まっていない。とにかく選手として最後までやり切って、その後のことは、それから考えようと思っている」
その口からこぼれるのは、いつも純度100パーセントのコメント。もちろん、この言葉に偽りはなかった。
FC東京で新たなポストに就くことが決定
最終戦後に行われたセレモニーの様子。この時はまだ、翌年のことは何も決めていなかったという 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
ただし、その変わり身の早さにはいつも驚かされてきた。今度もやっぱりそうだった。引退試合から数日後には、すぐにサーフボードを片手にバックパックを背負い、サーフトリップへと出掛けた。無心で波と戯れた、その旅から帰ってきた彼は、「やりたいことがある」と言い、次のステージの話を始めた。呆気に取られるこちらのことはお構いなし。よどみなく溢れる思いを言葉に換えていった。
「もう振り返ることはない。あの2試合で選手としては全てを出し尽くしてやり切った。そこはそこ。選手として出し尽くしたから後悔はない。もちろん選手時代に感じたことや、やってきたことをこれからにつなげていきたいけど、今はまっさらな気持ちで次にチャレンジできる感覚がある」
そして、年が明けた1月13日、クラブの新体制発表会で「FC東京クラブコミュニケーター」という新設されたポストへの就任が発表された。
「いろいろなことを考えた。指導者への道も、もちろん一度クラブから離れることも。広い視野で、いろいろな人と話をした。その中で残ったのは。FC東京を強くしたいという気持ちだった。自分もこのままじゃ終われないし、このクラブと関わる中で、共に成長していきたい。その中で、自分だけにしかできない役割があると思った。このクラブがどうあるべきか。今の自分にある、根拠のない自信を形にしていきたい」