戦力の融合で1段階上を目指すFC東京 “大型補強”が促したサブ組の奮起

後藤勝

リーグ戦序盤は守備陣が主役に

今季、FC東京に加入した大久保(中央)。ここまでは新チームでのコンビネーション形成に苦労している 【(C)J.LEAGUE PHOTOS】

 大型補強、大型補強と騒がれるが、なかでも大久保嘉人が多摩川を越えて川崎フロンターレからやって来なければ、FC東京がこれだけ注目されることはなかっただろう。

 ところが、その大スターがパッとしない。

 新しいチームでコンビネーションの形成に苦労しているさなか、無得点で迎えた第3節、大久保はガンバ大阪GK東口順昭にPKを弾かれ、こぼれ球も押し込めず初ゴールを逃し、チームも3−0の惨敗を喫した。試合後の大久保はユニホームを投げ捨て、蹴ったことで、ファン、サポーターの怒りを買った。クラブから厳重注意を受け、謝罪をするに至った元得点王が、この状況からあらためて認められるには、もはや結果を残すしかない。

 そんな苦境にある大久保よりも、後方の守備陣のほうが、引いて守ることが多かったリーグ序盤戦では主役であるように映った。 開幕戦となった鹿島アントラーズとの試合では、セカンドボールの争奪戦が焦点となり、これを制したボランチの橋本拳人と高萩洋次郎がキープレーヤーだった。名古屋グランパスから移籍したサイドハーフの永井謙佑も、守備での貢献が目立った。

 GKの林彰洋も、このリーグ戦序盤に関しては「細部の不備は露呈したが、守備のほうは結構まとまりつつあった」と言っていた。なるほど、林がセンターバックの森重真人と、あるいは橋本と高萩がボランチ同士でコミュニケーションを取っている様子は確かによく見かける。

シンプルだった補強の狙い

補強の狙いはシンプルだった。優先順位が高かったボランチには高萩洋次郎が収まった 【(C)J.LEAGUE PHOTOS】

 リーグ戦初黒星を喫したガンバ戦から中三日、15日に行われたルヴァンカップの初戦、ベガルタ仙台との試合は6−0の大勝利で、何が今シーズンの要諦となっていたかが明確になった。

 大半の主力が休み、8人がそれまでのリーグ戦3試合でベンチまたはベンチ外の扱いというメンバー構成で、G大阪戦に引き続き先発したのはわずかに3人。23日と28日に開催されるW杯アジア最終予選の日本代表メンバーに選ばれた林、森重、高萩だけだった。彼らのうち、新加入は林と高萩の2人。つまり、昨年までのメンバーに、GKとボランチを補強しさえすれば、十分に強くなりうることが証明されたのだ。

 補強の狙いはシンプルだった。

 優先順位が高かったのは米本拓司の負傷離脱と高橋秀人のヴィッセル神戸への移籍で手薄となっていたボランチ。ここに展開力と守備力を兼ね備えた選手を連れてこなければならなかったが、紆余(うよ)曲折の末、最終的に高萩がそこに収まった。そして武藤嘉紀、太田宏介、権田修一が欧州に去ったあとの穴を埋めるために、大久保と永井、林を獲得し、左サイドバックに太田を復帰させる。さらにJ2で確かな実績を持つGK大久保択生、昨季得点王であるピーター・ウタカの加入は、戦力に厚みを持たせるためのとどめとなった。

 問題はこの豊富な戦力をどう運用するかというマネジメントだが、いまのところ順調に進んでいると言っていいだろう。

“大型補強”で獲得した選手と昨シーズンの功労者を組み合わせた、リーグ開幕時の先発メンバーは林、室屋成、森重、丸山祐市、太田、橋本、高萩、河野広貴、東慶悟、永井、大久保。途中出場する可能性が高いベンチメンバーが中島翔哉、前田遼一、徳永悠平または田邉草民。彼ら以外の選手には、異なるカテゴリーでチャンスが与えられた。

 4日の第2節までに出場がなかった阿部拓馬と吉本一謙は、翌日の練習試合で水戸ホーリーホックを相手に獅子奮迅の働きで存在を鮮烈にアピール。激しいプレッシングで押し込む水戸に先制を許しながらも阿部が同点弾、吉本が逆転弾を決めて勝利をもぎ取っている。

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著者プロフィール

サッカーを中心に取材執筆を継続するフリーライター。FC東京を対象とするWebマガジン「青赤20倍!トーキョーたっぷり蹴球マガジン」 (http://www.targma.jp/wasshoi/)を随時更新。「サッカー入門ちゃんねる」(https://m.youtube.com/channel/UCU_vvltc9pqyllPDXtITL6w)を開設 。著書に小説『エンダーズ・デッドリードライヴ 東京蹴球旅団2029』(カンゼン刊 http://www.kanzen.jp/book/b181705.html)がある。【Twitter】@TokyoWasshoi

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