齧歯類の下歯がトド松を倒す。メラグラ。 「競馬巴投げ!第153回」1万円馬券勝負
ビーバーはなぜ巨木を倒すほど齧りつくすのか
[写真1]レッツゴードンキ 【写真:乗峯栄一】
ビーバーはカピバラやネズミなどと並ぶ「齧歯類(げっしるい)」の代表選手だ。齧る(かじる)歯の類である。しかしビーバー最大の弱点は、その自慢であるはずの丈夫な歯にある。
ビーバー生息地の周りの樹木は齧り倒されて荒地のようになる。森林被害として問題にもなるが、しかしビーバー自身は葉っぱや木の皮は食べるが、木の幹は食べない。なぜ巨木を倒すほど齧りつくすのか。
ビーバーの飛び出た上歯2枚は木に差し込んで獲物(樹木)を固定する。実際に齧るのは下歯2枚だが、この下歯、放っておくとどんどん湾曲して伸び、自分の顔の前面から頭上を回って後頭部に突き刺さる。齧りたくないけど、木の幹を齧らないと自分の伸びていく下歯に殺される、齧歯類は辛い宿命の中で生きている。
つまり野生動物のオスは自分の最も得意とする技でメスの興味を引く
[写真2]ダイアナヘイロー 【写真:乗峯栄一】
天井裏に住むイエネズミが電気配線齧ってショートさせて火事になる話もあるが、あれもイエネズミが「この家けしからん、火事起こしてやる」と電線齧っているわけではない。伸びてくる自分の歯を削るために目の前の電線齧っていたら火事になったというだけのことだ。
例えばタンザニア・セレンゲティのオス・ライオンは成長すると群れから離れ、他のメス集団に参入する。このときメス集団がオスを受け容れる(交尾する)かどうかはオスの手みやげによって決まる。
手みやげがバッファローやヌーの大物なら「あら“できる”オスなのね」と、メスはさりげなく尻を向けるが、イボイノシシやガゼルの中物なら「うーん」と考える。地ネズミなんかだとハナも引っかけられない。
南米アンデスのラクダの仲間グアナコは繁殖期になるとオスどうしが唾をかけ合う。より臭い唾を吐けるオスが勝ち残ってメスに迎えられる。
「あなたの唾って何て臭いの」というメスの誉め言葉を得るために、オスは日夜臭い唾に磨きをかける。
オス・ヘラジカの大角とか、オス・クジャクの羽だってそうだ。つまり野生動物のオスはすべて自分の最も得意とする技で他のオスと勝負し、メスの興味を引く。悲しいことだが、これは人間を含め、ほぼすべての動物に共通する。