日高・帯広めぐリアーナ 「競馬巴投げ!第152回」1万円馬券勝負

乗峯栄一

3泊4日で、牧場五つ、競馬場三つ

[写真1]ダーレー・スタリオンで見せてもらったアドマイヤムーン 【写真:乗峯栄一】

 今年のダービーの晩、府中での飲み会でJRA職員の小西くんという若者に会う。普段は北海道浦河のBTC(軽種馬育成調教センター)で日々、サラブレッドの調教をやっているという。京都の大学の馬術部出身だが、いまはあまり人のいない街で日々過ごしているらしい。

 謙虚、誠実で人当たりがよく、寂しい街で暮らしているのが気の毒なようにも思える。一口に「JRA職員」といっても、ほんとに多種多様な職種があるものだ。

「一度、浦河まで見学に来ませんか」と誘ってくれたので、「行こう」などと調子よく答える。

 牧場見学など、ここ10年は行っていない。以前は、これでも競馬雑誌などから「あそこの牧場の取材を」とか「引退したあの馬の取材を」などとちょくちょく言われたものだが、最近は競馬雑誌の景気が悪いのか、「あの男の与太話付きの取材はもううんざりだ」と思われているのか、さっぱりそういう話が来ない。

 その“ダービー反省会”の席には、スポニチ元レース部長の山本智行さん(ぼくらはチコーさんと呼んでいる)もいた。彼はその時点で7月スポニチ退社を決めていた。まだ50そこそこなのに会社辞めてどうするのかということだが、たぶんフリーの競馬・スポーツライターをやるのではないか。

「乗峯を踏み越えて行こうとするのか!」と叫びたいところだが、「踏み越えて行く」気なんだ、きっと。悲しいことに、これが簡単に踏み越えられるしね(涙)。

 とにかく彼は牧場ツアーによく同行していて、色んな牧場に知り合いもいる。「じゃあ、BTCを中心に、日高の牧場巡りと、あと札幌競馬と、帯広ばんえい競馬と、門別競馬場と」などと盛りだくさんの計画になる。8月末の話である。

 名古屋の舩橋(ふなはし)くん、伊藤さんという、旅行計画プロの競馬仲間が、網の目をくぐるような綿密な計画を立ててくれて、3泊4日で、牧場五つ、競馬場三つという奇跡のようなスケジュールで回った。

個人的な最大の感動は、やはりBTCの広大さだ

 夜のナイター競馬の成績の方は大したことはなかったが、牧場はどこもよくしてくれた。

 ダーレー・スタリオンではアドマイヤムーン[写真1]、キングズベストなど貴重な種牡馬を一頭一頭見せてくれる。

[写真2]コンプリカーターの17・父キズナ 【写真:乗峯栄一】

 ノースヒルズ新冠繁殖牧場では生まれたての貴重な仔馬たちを見せてもらう。[写真2はコンプリカーターの17・父キズナ]まだ生まれて数ヶ月、お母さん(コンプリカーター)から離れない。でも3年後にはやるかもしれないよ。

 社台スタリオンではディープインパクトやオルフェーヴルまで見せてもらったらしい。(このときぼくは別行動をとってしまったが)

[写真3]BTCにある直線二千メートルの芝コース 【写真:乗峯栄一】

 しかし個人的な最大の感動は、やはりBTCの広大さだ。[写真3]は直線二千メートルの芝コースだ。

 奥の方にハロン棒も見えるが「直線」という感じではない。幅も広いところで五百メートルぐらいあって、直線じゃなくたって、斜めに走ろうが、真横に走ろうが全然OKの芝地なのだ。パンフレットに「フランス・シャンティやイギリス・ニューマーケット」にもひけを取らない敷地と書いてあるが、ぼくも「全然ひけを取らないなあ」とうなった(シャンティもニューマーケットも行ったことがないのが残念だが)。しかもこの広大な芝コースはあまり使われないらしい。写真奥に白く長い建物が見えるが、これが直線千メートルの屋内コース、写真には写ってないが、左側にも屋根付きの屋内坂路千メートルコースがあって、こちらの方がよく使われるらしい。

[写真4]BTCの丘 【写真:乗峯栄一】

[写真4]は、その屋内坂路の上の丘から全景を撮ったものだが、実はこの標識の丘にも「芝坂路」などと呼ばれる広大な敷地があって、全く驚くばかりだ。

 ぼくのように、広大な敷地をみると開放感を覚える人間は多いはずだ。BTCは予約すれば、割と気楽に見学させてくれるので、北海道浦河、若干行きにくい所ではあるが、もし近辺に行くことがあれば寄ってみて欲しい。

北海道日高は競馬ファンには素晴らしい思い出になる

[写真5]ばんえい競馬は凄い迫力。ぜひ輓馬を残して欲しい 【写真:乗峯栄一】

[写真5]は帯広ばんえい競馬。輓馬(ばんば)を見るのは久しぶりだが、やはり凄い迫力だ。その上、おとなしいこと限りない。ぜひ輓馬を残して欲しい。本州でばんえい競馬やれないものかなあ。

[写真6]門別競馬場、「オシャレ度」でいうと、地方競馬ナンバー1では? 【写真:乗峯栄一】

[写真6]は門別競馬場。ここも15年ぶりぐらいだが、スタンドは小さいが、新建物も出来ていて、その新スタンドがカラフルでかわいくで、パドックの周りにはビアホールもあるし、ジンギスカン・テーブルの並ぶ芝地もあるし、「オシャレ度」でいうと、地方競馬ナンバー1なんじゃないだろうか。

 とにかく、北海道日高地方、牧場と牧場の距離は離れているし、レンタカーで走り続けなければならないが、しっかり牧場に予約を入れて訪ねれば、競馬ファンには素晴らしい思い出になる。ナイター開催やっている競馬場もあるしね。ぜひ一度。

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著者プロフィール

 1955年岡山県生まれ。文筆業。92年「奈良林さんのアドバイス」で「小説新潮」新人賞佳作受賞。98年「なにわ忠臣蔵伝説」で朝日新人文学賞受賞。92年より大阪スポニチで競馬コラム連載中で、そのせいで折あらば栗東トレセンに出向いている。著書に「なにわ忠臣蔵伝説」(朝日出版社)「いつかバラの花咲く馬券を」(アールズ出版)等。ブログ「乗峯栄一のトレセン・リポート」

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