女子ラグビー日本代表がW杯で得たもの 「タックルすら入れない」衝撃の敗戦も
ベスト8を目指すも、1勝4敗で11位
オーストラリア戦でディフェンスする鈴木実沙紀。女子日本代表は体格の差にも苦しんだ 【Photo by David Rogers/Getty Images】
8月9日から26日にかけて、アイルランドで15人制の第8回女子ラグビーワールドカップ(W杯)が開催された。「サクラフィフティーン」ことラグビー女子日本代表は、アジア予選を勝ち抜き、4大会ぶりに出場を果たした。「男子より先にベスト8」という目標を掲げて大会に臨んだものの、予選プールは3戦全敗で結果は1勝4敗。最終戦で、同じアジア勢の香港代表に勝利したが11位で大会を終えた。
世界ランキング14位(大会開始時)の日本代表は、予選プールでW杯ベスト4常連のフランス(同4位)、開催国のアイルランド(同5位)、オーストラリア(同6位)と同組となった。大会は12チームが3つの予選プールに分かれて戦う形式だったため、1勝2敗以上、負けたとしてもしっかりと勝ち点を獲得しておけば、目標とするベスト8に入れるという算段だった。
堤ほの花「フィジカル、スキル、全部に差があった」
フランスには74点を奪われて大敗。スピード、パワーで圧倒された 【Photo by David Rogers/Getty Images】
2012年に就任し、4年間かけて若手を起用しつつ選手を鍛え上げてきた有水剛志HC(ヘッドコーチ)も「W杯本番の戦いを経験できたことは素晴らしい成果ですが、通用しなかったのがフィジカル、ブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)、1対1のタックル」と言えば、7人制ラグビー(セブンズ)でリオデジャネイロ五輪にも出場したCTB冨田真紀子は「(セブンズ同様)15人制でもトップ8とトップ4の間に相当、壁はある。(トップ4には)全然歯が立たない。タックルすら入れない」と言わしめるほどだった。
若い選手は大敗したフランス戦で何を感じたのか――。
低く、鋭いタックルで日本代表のディフェンスを支えたPR江渕まこと(青山学院大2年)は「フランスは他の国と違って中身がつまっている感じ」と言えば、WTB堤ほの花(日体大2年)は「フィジカル、スキル、全部に差があった」、またFB清水麻有(日体大2年)は「アジア相手では外まで回せたけど、(スペースを)詰められちゃって回せなかった。日本の中ではスキルは上だと思っていたけど、世界の中では下だとわかった」と振り返った。
大会「ベスト15」のSH津久井を中心にリードする場面も
大会ベスト15に選ばれた津久井萌。まだ高校3年生だが、世界に注目される存在となった 【斉藤健仁】
「スクラムとクイックフェイズアタック(テンポのはやい連続攻撃)は通用した」と指揮官が言えば、大会最年少で、唯一の高校生ながら出色の出来で大会の「ベスト15」にも輝いたSH津久井萌(東京農大二高3年)も「(自分が)いいパフォーマンスでできていたときは日本のアタックができていた」と胸を張った通り、2戦目のアイルランド戦では日本の良さが十分に出て試合をコントロールする。スクラムからペナルティートライ、そしてテンポの良い連続攻撃からFB清水が個人技でインゴールに飛び込み14対0で前半を折り返した。
しかし、相手がシンビンとなり数的有利となっていた後半最初、ゴール前まで攻め込むも「どうやって攻めても(相手のDFが)開かなかった」(SH津久井)。トライを取り切れないでいると、逆にカウンターから相手にトライを与えてしまい、その後はボールを展開しても、相手のジャッカル(タックル後にボールを奪うこと)にも手を焼き、結局14対24と逆転負けを喫してしまった。
「フィジカルで80分戦い続けることの難しさを全員が痛感しました。ゲームのあや、勝負どころで、クロスゲームになったときに自分たちのチャンスをものにできるか。経験のなさが出た」と齊藤キャプテンが言えば、「自分たちはチャンスを取り切れなかったが、強いチームは取り切れる」とSH津久井はチームとしての課題を口にした。