鈴木彩香、W杯を「人生最高の瞬間に」 新境地を切り開く女子ラグビーの“象徴”
かつての司令塔から、最前線で戦うFLに
女子ラグビーW杯の日本代表に選ばれた鈴木彩香 【斉藤健仁】
7月30日、都内で会見が開かれ、8月9日からアイルランドで開催される8回目の15人制女子ラグビーワールドカップ(W杯)に、15年ぶり4回目の出場となる「サクラフィフティーン」こと女子ラグビー日本代表28名(FW16名、BK12名)が発表された。
その中に慣れ親しんだSO(スタンドオフ)やCTB(センター)といったBK(バックス)ではなく、FW(フォワード)の最前線で常に動き続けるオープンサイドFL(フランカー)として鈴木彩香が選出された。
引退した元選手たちは「彩香がいてくれて、うれしい」
2012年の香港戦にはCTBとして出場。司令塔としてチームを引っ張ってきた 【写真:築田純/アフロスポーツ】
昨年のW杯アジア予選はコンディション調整のため出場しなかったが、今回選出された28名の中で、前々回と前回のW杯のアジア予選に出場している唯一の選手であり、あと一歩のところで悔しい思いを味わってきた。
2010年、14年大会のW杯アジア予選はともにカザフスタンに力負けし、特に、13年はアウェーで23対25と僅差で敗れた。そのため彩香は「五輪に出場したセブンズと15人制はやっぱり別物です。自分が責任を果たせなかったという思いが強い。アジア予選で負けた悔しさは、本当に忘れたことがなかった。負けたときは女子ラグビーの15人制自体が縮んじゃうのかと思ったほど」と振り返る。
3回目の挑戦にして初のW杯出場に際し、彩香が思いを馳せるのは、やはり一緒に楕円球を追い続けた女子ラグビーのOGたちの姿だった。「いままで女子ラグビーを支えてきてくれた先輩に、『彩香がいてくれて、代表に残ってくれていてうれしい』と言われて、自分はそういう象徴なんだな、と思いました。15人制に懸けて、W杯を目指したが、出場できなかった選手もいました。そういった人たちの思いも背負って頑張りたい」
“エディージャパン”のように相手に走り勝つ
相手に走り勝つことで、歴史的勝利を目指す 【斉藤健仁】
サクラフィフティーンが標榜するラグビーは、相手より走って勝つ「高速フェイズアタック」であり、セットプレーやキックチェイスも武器とするが、男子で言えば15年W杯で3勝を挙げたエディー・ジャパンを彷彿とさせる。そのため4年前からチームを率いる有水剛志HC(ヘッドコーチ)は、彩香の特性を踏まえた上でのコンバートを決めた。
「当然、(彩香は)BKでも見ようと思っていた」という有水HCは「(アタック)ラインに入った時、(身長168cmと)体もあってコンタクトもでき、パススキルがあってつなぐことができる。男子の代表で言えば布巻(峻介)や金(正奎)といったリンクプレイヤーになってほしくてFLにしました。あとはセットプレーをどこまで落とし込めるかですが、今は手応えがあります」と、FWとしての彩香を高く評価しており、選出理由を説明した。